察人姫-第弐話-
午後十一時。
ソラの部屋。
昔は女の子らしい部屋だったが、今では加湿器や炬燵など半分物置状態になっているが掃除はキチンとしてあるようで、ソラが実家に帰るのはゴールデンウィーク以来の一ヶ月ぶりになるが、ホコリなどは全くといっていいほど見られない。
「で、どうだった?」
湯上がりのため、まだ少し湿った髪のユーイチはタオルを首に巻いて指定席とも言える座椅子に腰掛ける。
「何回か見直したからもう覚えたよ。なんとなく見当はつくけど、明日更衣室で確認すればバッチリ」
「ならいいや。けどさ、これって僕らも盗撮事件に悪い意味で関わってないか?」
「そんなの気にしちゃ探偵はできないよ、ユーイチ。グレーゾーングレーゾーン」
「いや、ブラックじゃね?」
リビングで美奈子から渡されたアイスの蓋を開けてから訊ねるユーイチにソラはさらっと答えてみせ、先程まで操作していたパソコンをシャットダウンしてからベッドに腰掛ける。
「私にも一口」
「いいけど、抹茶だぜ?」
「なんでストロベリーにしなかったの!?」
「美奈子さんが食べてた」
ソラから恨めしそうな表情で睨まれながらもユーイチは淡々と食べ続け、完食してから本題だと言わんばかりに鞄から集めた資料を取り出し、机の上に広げる。
「とりあえず仕掛けた犯人は女子ってことで進めていいのか?」
「うん。動画の再生時間から考えて仕掛け人も一緒に着替えてるっぽいし、体育館の入口には誰か先生が立っているから外部からの仕掛けは難しいからね」
「なら、撮られた女子のクラスの割り出しだな。たしか予行演習で女子が着替える場所は体育館更衣室、プール更衣室、視聴覚室、被服室、理科実験室、家庭科調理室だったよな?各四クラスで……」
「うん、そして調べもバッチリだよ。予行演習五日間で着替える部屋の変更はなし……三年生の五、六、七、八組。女子の総数は七十一」
各学年八クラスからはだいぶ絞れたが、まだ仕掛けた犯人の候補は多い。
「そこでグッドニュースがあるよ」
「うん?」
「撮影日が特定できたの」
それはかなり人数が絞られる情報だった。