察人姫-第弐話-
「ね、祐市くん。大学の勉強はどう?」
「もう卒業できるだけの単位はほとんど取りましたよ。あとはゼミ関係くらいです。まあ講義はこれからも取りますけど」
「そう、流石ね。ソラはちゃんと勉強してる」
「どうですかね。興味のあることは真面目に受けてますけど、それ以外は……」
「やっぱり……春に成績が送られた時はびっくりしたもの」
ユーイチがお土産に買ってきたケーキを食べながら会話するユーイチと美奈子。そんな会話に呆れた表情のアタルと、そっぽを向くソラ。
「さ、さあアタル!お姉ちゃんと久し振りにゲームしよう!」
「やだよ、せっかく浅蔵先輩が来てるのに……姉さんは勉強でもしたら?」
「うるさい、お姉ちゃん命令だぞ。ニンゲンドーViiを出せ」
「はぁ……」
居心地の悪くなったソラに命令さる、渋々ゲームのセットをするアタル。そんな二人を見てなんだかんだで仲がいいなと思うユーイチだった。
「おいソラ、ゲームもいいけど調査も忘れんなよ?」
「分かってるよ。ユーイチがお風呂入ってる間にしとくよ」
「ん、忘れてないならいいや」
「ふふ、まるでお母さんね、祐市くん」
「お母さんは美奈子さんでしょ……そう言えばお兄さんは最近どうですか?」
「一週間ほど帰って来てないわ。すごく忙しいみたい」
「そうですか」
佐伯満(ミツル)。今は不在の佐伯家の長男。職業は警察官で歳は大学を出たばかりの二十二。来月二十三歳を迎える新米なのだが四月の段階で殺人事件の捜査に参加したり、現在は要人警護など社会人になったばかりの人間としてはあり得ない仕事をしている謎の人物である。
大学も実家から近い普通の四年制大学を卒業しており、在学中も特別な資格も業績もない普通の大学生であった。当然警察学校にも行っておらず、家族内でミツルが警察官になったのは嘘だという推測もあったが、彼の所持する警察手帳は本物。本人は自分のことをほとんど語らない……正確には嘘ばかりで誤魔化すため、なぜ彼が今のような立ち位置にいるのか知っているものはこの家にはいない。