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察人姫-第弐話-

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 二階建ての一軒家。車庫には車を二台停めるスペースがあり、その内一台は左ハンドルの高級車。上品な佇まいで庭も広く、そこそこの規模を持つ露利駅から歩いていけるという立地条件から、佐伯家が富裕層であるということが伺える。
「たっだいまー」
 ツーロック式のドアを勢いよく開いて家中に自身の帰宅を知らせたソラは小学生のように靴を脱ぎ散らかしてリビングへ向かう。対してユーイチはその靴をきちんと整え、ゆっくりとリビングへ向かった。
「こんばんは、お邪魔します」
「こんばんは。久し振りね、祐市くん」
 リビングに入って礼儀正しく礼をしてから挨拶するユーイチを迎えたのはソラとアタルの母である佐伯美奈子。低身長揃いの佐伯家で身長百七十二センチ(自己申告)と背が高く、スタイルも良くて美人である。唯一欠点を挙げるとすれば運動神経が壊滅的にまでひどい(ソラ、アタル談)ということだ。
「しばらく見ない内に大人っぽくなっちゃって……大学じゃモテモテでしょ?」
「そんなことないですよ。彼女もいませんし」
「じゃあソラを貰って。結婚して。私の息子になって」
「いえ、結構です」
 こんなやり取りはユーイチとソラが高校生の頃から続いており、一種の挨拶のようなものである。
「じゃあ……私の夫になる?」
「はっ?えっ……ええっ!?」
 しかし、今回は違ったパターンも用意していた美奈子にユーイチは狼狽える。
 美奈子の夫……つまりソラやアタルの父は六年前に他界しており、可能といえば可能である。年齢は四十の後半だと言うのに生き生きとした肌、妖艶さを漂わせる美貌に流石のユーイチも照れる。
「じょ、冗談はやめてください」
「そーだよ、ユーイチがお父さんなんて嫌だよ」
「あらそう、残念ね」
 そんなやり取りをしてから十分後、部屋着に着替えて勉強をしていたアタルも降りてきて、夕食となる。今夜の献立はご飯、味噌汁、豚のしょうが焼き、サーモンを乗せたサラダ。全部ユーイチの大好物だった。



作品名:察人姫-第弐話- 作家名:朝朽 司