察人姫-第弐話-
「つーかさっさと付き合っちまえよ、お前ら」
「うるさい、マサ」
「あたしもそう思う。茜なら絶対オッケーだよ。ってかアタル君、茜のこと待たせすぎ」
「もう勘弁してよ、大石さん」
露利駅へ向かうバス。大会前ということで下校時刻に特例がある部活動とは違い、完全下校を守らなければならない生徒会のメンバーのほとんどはバス通学で、バスの後部座席に座るアタルは千早と正俊の両サイドから茜とのことについて弄られている。
「いいねぇ、青春だねぇ」
「ったく、そんなだからアタルに邪険にされるんだよ」
そんなやり取りを一つ前の座席で聞きながらほのぼのと微笑むソラと携帯を弄るユーイチ。門田へ呼び出しメールを送っているのだろう。
「それより……姉さん、なんでこのバス乗ってんのさ。渡貫駅なら乗り換えしなきゃいけないんだろ?」
「色々あるの。あ、ちなみに今日私とユーイチ泊まるから。お母さんにはちゃんとメールしたよ」
「ええっ!?」
「あっ、言うの忘れてたな。世話になる」
「いえ、浅蔵先輩は大歓迎ですけど……」
困惑した表情のアタル。兄のような存在であるユーイチの宿泊は嬉しいが、鬱陶しい姉の相手をするのが億劫なのだろう。
「これからちょっと用事があって帰るの遅くなるからお母さんに言っておいて。あ、晩御飯までには帰るから」
「あ、うん……」
「そう言えばアタル、お前は塾ないのか?」
「今日は授業ないので」
「いつも自習してるんじゃないのか?」
「姉さんが帰って来るならそれどころじゃないですよ」
「ああ……だな」
そうしている内にバスは露利駅のロータリーへ到着する。