察人姫-第弐話-
「うう……自信あったのになぁ……ショックだよ」
「百発百中の推理なんてあり得ないんだから当たり前だろ。まぁあの六人が完全に犯人じゃないとは限らないけど、また考え直せばいいだろ」
アテが外れて落ち込むソラに対して今まで集めた資料に目を通して別の可能性を考えるユーイチ。そしてそんな二人を尻目に仕事に取りかかる生徒会役員。
生徒会長の佐伯中。
副会長の中村智也。
同じく副会長の大石千早。
会計の柿内茜。
書記の門田正俊。門田雅晴の弟だ。兄が事件に関わっていたことは知らない。
庶務の二人は二年生で何やら集まりがあるため欠席ではあるが、このメンバーが今期の生徒会役員である。
「けどカメラの設置場所は当たってる気がするな……ソラ、やっぱり帰りにデータをもらってくるからお前が確認してくれ」
「ユーイチはしないの?」
「それは不味いだろ」
そんな会話に役員の一人、大石千早が反応する。
「あの、データってもしかして動画のですか?」
「うん、掲示板にアップした人は分かってるからね。どの当たりから撮られたかで仕掛けた人が特定できるかもだから。安心して、ユーイチには見せないから」
「いや、見ないって言っただろ……」
アップした人物を特定していたことに皆は驚いたように二人に注目し、副会長の中村や千早は追及するが、正俊も同じ部屋にいることを考慮して明言は避ける。
「あの、そろそろ私は……」
「ああ、お疲れ様」
そんな中、遠慮がちに茜はアタルに言ってペンケースを鞄に戻し、電卓を所定の場所に戻して帰り支度をする。
「あれ?カッキーはもうお帰り?」
「えっ?あ、はい、塾がありまして……」
「そかそか。お疲れだね、勉強頑張って」
勝手にあだ名を付けられた茜は礼儀正しくソラやユーイチに一礼して生徒会室を出ていく。
「いつもカッキーは早退するの?」
「え、ええ……どうも親が厳しいらしくて、高い成績を維持しないといけないみたいです」
「ふうん、大変だね。塾ってアレでしょ?人気の気合塾……アタルと同じとこだよね?昨日イチャイチャしてたの見たし……」
「……姉さん、ちょっと話し合おう」
「あれ?なんか目が怖い……うそ、本気で怒ってる!?助けて、ユーイチ」
「知るか、バカ」
それからちょっとした姉弟喧嘩がはじまり、生徒会役員はただ見物している内に完全下校時刻を迎えた。