察人姫-第弐話-
露利駅近くの喫茶店。
時刻は午前十時三十分。
人はほとんといない。
新聞を広げ、コーヒーを飲む男性が一人。
アルバイトの女性とカウンターで楽しげに話す青年が一人。
そして、緊張した表情で閉じたままの週刊少年漫画を机に置いたまま貧乏ゆすりをしているスーツ姿の若い男性が一人。
「あなたが門田雅晴さんですね」
ユーイチは店内に入り、近づいてくるウエイトレスを手で制して一直線にその男の向かいに座り、そう言った。
「まさか君が……」
「はい、電話させてもらった者です」
おしぼりを持ってきたウエイトレスにコーヒーを注文してからユーイチさ球道からもらった資料の一部を門田に渡す。それを門田は慎重に確認すると、みるみる顔は青ざめ、すがるような表情でユーイチを見る。
「あ、う……頼む、このことは……」
「そんな話はあとにしてもらえませんか?その前に訊きたいことがあるんですよ」
運ばれたコーヒーに砂糖を少量入れ、ユーイチは問う。
「これはどうやって入手したんですか?」
「……」
「お答えできませんか?それなら僕もそれなりの対応をとらせてもらいますけど」
「……買ったんだ」
「それは誰から?」
「わからない」
「わからないってことはないでしょ。あなたは誰からそれを買ったんですか?」
「だからわからない。知らない。本当だ、俺は相手の顔も名前も知らない」
門田の様子は嘘をついている者のそれではない。
ユーイチもそれを感じ、面倒なことになったとため息を吐く。