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察人姫-第弐話-

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「それじゃあ質問を変えます。取引内容について知っている限りのことを詳しくお願いしますね」
「取引内容……」
「はい。やっぱり一つずつ訊いていきましょうか。まず、どのような形で動画は渡されたんですか?」
「形……USBだ。USBメモリでもらった」
 話してもらうより質問していった方が効率が良いと判断したユーイチは手帳片手にメモを取りながら続けていく。
「では、どのようにして渡されましたか?」
「渡されたと言うよりは……置かれていた」
「置かれて?」
「ああ、俺が住んでる部屋のポストに何も書かれてない封筒が入ってて、その中にデータがあるんだ」
 球道の調べによると門田は実家と家が近いにもかかわらず一人暮らしをしており、この喫茶店からそう遠くないアパートが彼が現在暮らしている家である。そのポストは申し訳程度にダイヤル式の鍵があるのだが、面倒なので誰も鍵はかけておらず誰でも中から取り出すことができる。それはユーイチがこの喫茶店に来る途中で確認した。
「なるほど。受け取り方法はわかりました。では、代金はどのようにして支払っているんですか?」
「USBの入ってた封筒に入れるんだ。次の受け渡しやら注文は全部封筒の中で連絡する。相手については、いつ取りに来てるのかは分からないが、多分夜中。朝起きてポストを見たら封筒はなくなっているんだ」
「……ちなみに取引したのは今まで何回ありますか?」
「…………四回。今まで四本の動画を買った。今回アップしたのは三番目の動画だ」
「その内容は?」
「……全部保澄学園のだ。更衣室が三パターンで、四本目は陸上部の部室……明後日にはサッカー部の動画が届けられる予定だ」
 陸上部というワードにユーイチはピクリと反応する。寅田の一件でソラとユーイチが確認のために部室を調査した際、小型のカメラが発見された。天井の端の亀裂に埋め込まれており、そのカメラで撮られた映像が門田に売られたものであろうことはほぼ間違いない。
「……わかりました。それでは次の質問です」
 それからユーイチはいくつか質問をしたが、特に手がかりとなる情報を得るには至らなかった。



作品名:察人姫-第弐話- 作家名:朝朽 司