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ウリ坊(完全版)

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縞の反抗(恵)



ウリ坊の背中の縞模様が、近頃反抗的なんである。何度櫛で梳いてやっても
正しく流線を描こうとしない。あろうことか線の途中で阿弥陀目を作ったり
渦を巻いたりもする。
対処に困ったので、外出時にはリュックを背負わせることにした。黄色で
ふわふわの愛らしいリュックだ。根本的な解決にはなりはしないが、
こうすれば一応縞の大半が隠れる。
夏には調子を崩す裏ペットも多い。最近の私はオーナーへのアフターケアに
追われていて、縞の反抗に付き合っているヒマなど無かった。
リュックを背負わせて数日後、縞はすっかり元の位置に戻った。代わりに
腹の毛が一本一本カールしてきた。
ああ面倒くさい。
「わざとやったりはしていないね?」
思わず嫌味が口をついて出る。ウリ坊は私を見上げ、悲しげに訴えた。
「どうやるって言うんだよぉ」
「……悪い」
みっともないので、ウリ坊には薄手のシャツを着せた。これで背と腹の毛は隠れる。
今度は頭の毛が総立ちになった。
私はバリカンを手にウリ坊に迫った。
「毛を全て剃るのが一番手っ取り早い」
ウリ坊はたちまちのうちに青くなり、逃げ出した。ええい意気地のない。
オスなんだから良いじゃないか。
仕方がないので白い麦わら帽子を被せる。
翌朝、鼻毛が自分で蹴躓きそうなほど伸びていた。
つくづく、しつこい。
残るは全身をくるむ服しかないと考えた私は、全身タイツをウリ坊に着せた。
青いタイツで歩き回る様は相当妙ちきりんだが仕方がない。私は忙しい。
数日後、飄が家庭菜園のキャベツを持って訪ねて来た。全身タイツの
ウリ坊を見て絶句する。
「まさか、虐待……」
「殴りますよ?」
事の次第を説明すると、彼はなるほど、というや否や青タイツをひっぺがした。
全身の毛がカールして茶色いマリモみたいなすさまじい姿になっている。
ウリ坊は小さくなって震えている。
「恥ずかしいよぉ。見ないでくれよぉ」
「……酷いことをしますね」
うちのペットに狼藉を働くのはやめて欲しい。
彼はもの言いたげに私を見ると、かすかに震えているウリ坊を優しく抱きしめる。
頭や背中や腹の毛がなぜかゆっくりと直毛に戻っていく。ウリ坊はプヒプヒと
泣き出した。
ふたりの姿に疎外感を覚えて、私は黙ったままその様子を眺めていた。

作品名:ウリ坊(完全版) 作家名:まい子