小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ウリ坊(完全版)

INDEX|12ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

春の申し子(ウリ坊)



電話が鳴った。神さまからだった。
おいらは受話器を恵に渡す。彼女は面倒くさげに対応してから、相変わらずの
無表情で季節たちを見やる。
「結婚はしてはいけないそうだよ」
なにおう、と今年の春は風を巻き起こす。真冬は(泣いているつもりなのか)
しくしくとみぞれを降らした。
何故なんだろう? おいらは話が聞こえやすいように彼らに近づく。
今年の春が、恵の手から受話器を奪い取る。
「やいてめー、自分がひとりもんだからって僻んでんのか? 理由を言え!
え、なに? 春と真冬の子はどんなだって? 難しい物発注お断り?
発注って何だよ発注って。物じゃねぇよ!」
まくし立てる。今年の春と店内は桜まみれになっていた。興奮すると
桜の花びらが出る仕組みになっていたのか。
「うるさい」
トーンの低い声。
視線が恵に集中する。恵は今年の春に手を向ける。彼はしぶしぶ受話器を
渡した。恵は眉根を寄せ、いかにも不本意そうに
「梅ですよ」
ため息をつく。
「冬につぼみを付けてふくらみ、咲くと春が訪れる。梅は冬と春の合作です」
------二週間後、梅の赤ん坊が生まれた。

作品名:ウリ坊(完全版) 作家名:まい子