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ウリ坊(完全版)

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色の買い物(ウリ坊)



おいらは「虹が店」という色売り家に白い果実を持って行った。
店名の通り店舗は虹なので、毎日違う町で営業している。おいらは
駅の天気予報掲示板で「雨上がりのきれいな空の町」を調べ、その町まで
ネコ電車で行く。駅をいくつか通り過ぎると、雨上がりのきれいな空の町に
到着した。ネコの翠の瞳の窓からフイルムにすかしたような色の
大きな虹が見える。眺めていると乗り過ごしそうだったので
慌てて目をそらした。薄かったら閉店間際だが、はっきりとしたきれいな虹だった。
改札を出る。濡れた町を虹に向かって歩いた。
やがて虹の根本に着く。地面からすっくと伸びて、そのほとんどが
雲に隠れてしまうほど大きな虹だった。赤いポシェットから白い果実を
取り出し、虹の黄色の部分に当てる。とっくりから酒を注ぐときの
音がして、レモンがゆっくりと虹の黄色に染まっていった。
恵から渡されたパニクイレモンの色味になるよう、果実を動かしながら
調整する。
ちょうどいい頃合いのレモンイエローになったので、根本から引っこ抜く。
「6千円になります」
地面から声がした。「虹が店」は地下にあって地上で営業しているのだ。
虹はともかく、地面をどうやって移動しているのか不思議でならない。
帰ったら恵に聞いてみよう。思いながらスコップで地面を掘り6千円を埋める。
待っていると、虹の黄色の部分から二ミリほどが剥がれ落ちた。レシートだ。
青い色が好きなんだけどな。呟きながら空にすかすと、目の前が黄色に染まった。
これが青ならどんな天気でも青空に見えるのだ。
目をこらすと、レシートのところどころにオーロラ色の渦が巻いているのが
わかる。明細が書いてあるのかも知れなかったが、おいらには判読出来ない。
おいらは裏ペットショップに戻ると恵に尋ねた。
「どうやってお店を移動させてるんだよぉ。不思議だよぉ」
「あの店は町ごとにミミズを雇ってるんだよ。雨上がりのじめじめした地面の下で
喜んで働くような物好きはそれくらいしかないでしょうに」
あっさり返され、果実を取り上げられ、おいらはちょっと立つ瀬が無い。
大好物のホットヘビイチゴをぱくつきながら、早く大きくなって物知り博士に
なってやると復讐を誓う。
恵はこぶたをマットの上に寝かせ、足から上に向かってソフトに果実で叩いていく。
あれが「コピーするくらいならお手の物」な技術なのだろうか? 簡単そうに
見えるだけかな。
軽く叩いているうちに、レモンから色が抜けていく。こぶたの体が虹の
レモンイエローに染まっていった。

作品名:ウリ坊(完全版) 作家名:まい子