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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた

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【笑】の文字がぼんやりと見えはじめた
「おきた?」
聞こえた声に自分が布団の中にいるということに気付いた
「開かずの間だよ」
一言そういい残して鳥倶婆迦がパタパタと駆けていった
体にかけられていた薄手のタオルケットから抜け出し立ち上がる
一歩、そして二歩交互に足が動く
廊下に出ると小さく響いた風鈴の音
暗い廊下に差し込む月明かり
ちょっと鳴く廊下を歩く
辿り着いた外れの部屋の前で足が止まった
少し開いていた戸口から月明かりに伸ばされた誰かの影が見える
取っ手に手をかけたのはいいがあけようか迷う手をややしばらく見つめ少しだけ戸を動かしてみた
ガタっと小さく戸が音を立てた

伸びた影を踏んでその影の本体が腰掛ける窓枠の下に腰を下ろす
長い長い沈黙
まるで初対面
いや初対面の時は確か…

『誰だお前…』
緑色鮮やかな髪飾りを靡かせ立っていた
『…栄野…京助』
呼ばれた名前
『はぃ?』
驚いて上ずった返事を返した

それから…校内追いかけっこ…宙に舞って床に落ちたエビフライ…そして…そして…

「…京助?」
その時よりどことなく優しく親しくなった声で同じように呼ばれた名前
ハッとして呼ばれたほうに顔を向けると…泣きそうに下がった眉と不安一杯に見上げる顔
胸が締め付けられるという感覚はこんな時に使っていいんだろうか
切ないとも違う苦しいとも違う楽しいとも悲しいとも嬉しいとも…自分が知っている感情のどれにも当てはまらないこの気持ちは一体なんなのか
「あの…わ……」
口早に言葉を綴ろうとして途中で止めた
ゆっくりと顔を逸らし俯きそしてまた沈黙

鳥倶婆迦の言葉がふと頭をよぎった
『自分が誰なのかわからないんだと思う』
それに続いて…よぎった言葉
『…呼んでやんな…名前』
頭ではわかってる
コイツが誰なのか
名前も知ってる

自分が前に夢(?)の中真っ白い空間で道を見失った時導いてくれたのはコイツの歌

友達巻き込んで自分自身が嫌になって泣いた時側にいてくれたのもコイツ

気付けば隣にいた側にいたいてくれた

懐かしく思えたのは昔の記憶が少しあったから?
でもそうじゃないような気もする
【いてくれた】のはコイツなんだ
誰でもなく…いてくれたのはコイツ