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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた

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「少し休んだらどうやんきに…二人とも」
「…慧光は休んでくださいあとは僕が」
「乾闥婆こそ休むナリ…私はまだ大丈夫ナリよ」
阿修羅が壁に寄りかかった体制で部屋の中の二人に言うとこう返ってきた
「…二人とも休みなよ…」
乾闥婆と慧光の間を割って矜羯羅が座り向けた視線の先には横たわる清浄…柴田
「ちょ…割り込まないでください」
「矜羯羅様…」
矜羯羅が翳した手から溢れた優しい光りが柴田を照らす
「…二人とも」
阿修羅が言うと乾闥婆が溜息をつき慧光はチラリと矜羯羅を見た後立ち上がり阿修羅とともに部屋を去った

「…矜羯羅様…」
柴田が小さな声を出した
「…止めてください…」
そして矜羯羅の腕を掴んだ
「俺には…こうしてもらう理由がない…」
「君にはなくても君を望む人にはあるんだよ…」
矜羯羅がピシャリと言いきった
「望む人なんか…ははは…いませんよ…むしろ俺は憎まれて…」
「若とかよんでたね…」
柴田の動きが止まった
そしてそのまましばらくの沈黙
「…矜羯羅様…」
「何?」
「…若は…意地っ張りなんです」
「そう…」
「でも…優しいんですよ…」
「…ふぅん…」
そしてまた沈黙
「…俺…もっと早く若と会えてたら…」
「そうしたら緊那羅はここにはいなかったんだね」
矜羯羅の声が静かに響いた
「…どちらがよかったのか…誰が悪かったのか…追求するとキリがない…京助がよく言う言葉」
そう言って柴田に向けた矜羯羅の顔は微笑んでいた
「…過去に…君がそうしていなければ【今】はなかったんだよ…僕はこの【今】を後悔してはいない…【今】になるには過去がなければいけない…」
矜羯羅がゆっくり俯き目を伏せた
「【今】が好きだからみんな生きてるんじゃない? その【今】を作ったのは【過去】にいるもの全て…誰一人何一つかけてたら【今】は存在しなかった…過ちも後悔も全部含めて…【今】の材料だったんだよ…」
「…そんな…モンですか…ね…」
「…そんなモンなんだよ」
「…そうですか…」
片手で顔の上半分を覆った柴田の口元が微笑んだ