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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた

INDEX|28ページ/28ページ|

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「緊那羅」

驚いた表情が向けられた
「…歌え」
「…は?」
「いいから!歌え」
不思議なことに名前を呼んだだけで後から言葉が自然と続いた
「きょ…うすけ…あの…私…」
「う た え 」
何か言おうとしてる素振りの緊那羅に強く言う
「歌え…って…歌…」
気迫に負けた緊那羅がゴニョゴニョ口ごもっている正面に京助がしゃがむ
「聞きてぇんだ【緊那羅】の歌」
京助が口の端をあげて笑うと緊那羅の眉が下がった
「っ…ありがとう…」
俯いて言った緊那羅の頭を京助が軽く数回ポンポンと叩いた

「結局サボっちゃったねぇ…;」
南が頭をかきながらチラリと横目でサボリーズを見る
「こんな状態でいけんつーの; しゃーねーじゃん…後からウニにする言い訳考えようぜ?」
中島が言う
座布団を枕にまだ目を覚まさない本間
そのすぐ側に座る阿部は俯いたまま
本間と阿部から対面側の壁にもたれかかる坂田の頭には顔を隠すためなのか大きめのタオルが掛けられていた
「…しけってるぅー; 北海道は梅雨ないのにここだけ梅雨ー;」
南が言いながら溜息をついた
「…かた」
「…なんだよ」
ゴン
「…いてぇよ」
【ゴン】という音に南と中島が振り向くと制多迦が坂田に頭突きをしている様が目に入ってきた
「…めんね」
額と額をつけたまま制多迦が小さく謝りの言葉を言った
「なんで…お前が謝るんだよ…」
「…ょうじょう…柴田だっけ? 怪我したの怒ってるんでしょ? だからごめん」
制多迦がヘラリ笑顔で言う
「だから…なんでそれをお前が謝んだよ…怪我させたのはき…」
「…とを辿れば…操を緊那羅にした清浄が悪くて…清浄をそうさせた時がわるくて…だから僕もごめん」
「タカちゃん…支離死滅の言葉だけどなんとなーく…俺理解できた」
坂田と制多迦の側に来た南がしゃがんで言った
「俺も…坂田は?」
同じく中島もしゃがんで坂田に聞く
「…わかってる…緊那羅が悪くないっての…でも…」
坂田が今は綺麗になった自分の両掌を見て言葉を詰まらせた
「でも俺…どうやって緊那羅と話せばいいのか…って」
「何格好つけてんだよ」
言った坂田に中島が突っ込んだ
「そうそう【坂田】でいいじゃん」
南がそう言って笑う
「…かたは【坂田】だからね」
制多迦もヘラリと笑ってその後坂田の頭からタオルを引きずり取った
「…まんまでいいんだ」
南が坂田の右掌に自分の手を重ねると中島も坂田の左掌に自分の手を重ねた
「…ん…坂田のまんまで…ね?」
制多迦が坂田の頭から引きずり取ったタオルを坂田の首にかけながら笑った
「…あ…緊那羅の声…」
中島の言葉に一同が耳を済ませる

栄野家を包む緊那羅の歌

「ありがとな…----------------------…」
京助が声には出さずに5つの音を小さく呟いた
それは姿そのままで今も自分の側にいてくれてる誰かの名前
でも今は誰かじゃなく【緊那羅】
だからもう名前は呼ばない…だからありがとうだけを声に出して-----------…


          ありがとう 操ちゃん…