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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた

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「ストップ」
何か言おうとした迦楼羅の肩に手が置かれグイと後ろに引張る
「…京助…お前…」
驚いた顔で見上げる迦楼羅に京助が口の端を上げた笑顔を返した
京助が一歩足を進める
ジャリっという音がした
無言のまま迦楼羅が一歩足を下げた
【緊那羅】は無表情のままだった

「回復が遅い…どうして…」
乾闥婆がなかなか止まらない清浄の赤い液体を見て表情を曇らせた
「大丈夫だよな? …な?」
中島が乾闥婆に聞く
「清浄といえば…向こうでも中の上階級…ならばそれ相応の宝珠を持っているはずなのにこの回復の遅さ…」
中島のといには耳かさずというカンジに乾闥婆がブツブツと何かを呟く
その間も坂田は自分の両手を見ていた
赤い液体がついた両手
中島がそんな坂田に気付きその両手を自分の両手で掴み握らせる
「大丈夫…大丈夫だからな…落ち着けよ…大丈夫」
南が呪文のように繰り返しながら坂田の背中を抱きしめる
「なあ…宝珠と…傷の治りって関係してんのか?」
中島が聞く
「…ソーマは宝珠の力を借りて回復する薬です…宝珠に選ばれたもの以外にはただの苦い液体…宝珠に選ばれたものだけがソーマで回復できるんですが…おかしい……!! …まさか…あの時…扉を開けたの…は…」
乾闥婆が何か思い出したのか大きな目を更に大きくして清浄を見た
「貴方…だったんですね…宝珠を使ってあの時扉を開けたのは…」
乾闥婆の言葉に清浄が口だけで笑った

ゆっくりと京助が【緊那羅】に向かって足を進める
【緊那羅】は動かない
背中にあった半透明の羽根はいつしか消えていて緑の飾りが微かな風にふわりと揺れていた
「…忘れててごめんな」
京助の第一声
「思い出した…気がする」
そして第二声
「怒ってるよな…守ってくれたのに守られた本人まで忘れてた…んだから…」
矜羯羅と慧光が腕を下ろし【緊那羅】に歩み寄る京助を見る
「謝って許してもらえるとか…そりゃちょっとは思ってるかも知れねぇけど…そう調子よくいかねぇっても思ってる…し」
後三歩でというところで京助が足を止めた
「俺…さ今年で14になる…んだ同い年…いやいっこ下? まぁあんまかわらねぇけど…14…ってもっと大人に見えて…たんだよな」
無表情の【緊那羅】がたぶん京助を見ている
「だから…かなり我儘とか…言ってた…気がしなくもねぇんだけど…けど…け…ど…」
京助が言葉に詰まった
「…ありが…とうの…言葉照れくさくて…言った事ない気がするんだよ…な」
【緊那羅】がその言葉にゆっくりと目を伏せた
「そしてごめん…俺…今は名前呼べない…俺にとってソイツは…」
「京助…」
【緊那羅】の唇が確かにそう動き音を発した