【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた
「あれって…」
緊那羅に向けて清浄が放った光りがだんだんと形を作っていくのを見て南がそれを指差した
「…あれが牛…であっちは戌…十二支?」
中島も光りを見て言う
「そうです十二支…清浄の使役です」
乾闥婆が言った
「清浄は竜と対をはる使役の使い手…」
「え!?; 何!? じゃあラムちゃんやばくね?;」
乾闥婆の言葉に南が突っ込む
「…僕らの知っている【緊那羅】なら確実に…でも今の【緊那羅】は…緊那羅であって緊那羅ではないですから…僕にも…どうなるのかわかりません…」
乾闥婆が顔を顰めた
緊那羅の背中の羽根がゆっくりと折れ緊那羅を覆い隠すようになるとそれが一気に開き強風が巻き起こった
「うおぉおおッ!!;;」
「きゃあッ!!;」
「ッ…!!;」
その強風で十二支の光りの動きが鈍くなると清浄が唇を噛んだ
「…竜の力…か」
清浄はボソッと呟くとフッと笑い腕に抱えた本間を見、そのあと阿修羅を見ると本間を抱く腕に力を込めた
「…ちょ…ま…!!;」
阿修羅が駆け出すと同時に本間の体が宙に放り出される
「香奈ぁあ----------------------ッ!!!!」
制多迦に抱えられた阿部が悲鳴に近い声をあげた
「本間ちゃ…!!!;」
阿部に続いて声を上げそうになった3馬鹿が声を止めたのは阿修羅が見事に本間の体を受け止めたのを見届けたからで
「せ…せぇえーふ;」
つま先立ち中腰で本間を受け止めた阿修羅がつま先をプルプルさせたままで言う
「…京助」
くいくいと再び鳥倶婆迦が京助の服を引張った
「…ああ…」
その鳥倶婆迦の頭に手を置くと京助が緊那羅に視線を向けた
「香奈…ッ!!」
阿修羅に抱えられた本間に阿部と中島そして南が駆け寄った
「大丈夫やんきに…ただ…気を失ってるだけだ…」
「…それはいいんだけどさ…あしゅらん…足プルプルしてない?」
南が阿修羅を見上げていうと阿修羅がうっという顔をして視線をそらしあからさまに不自然だろうという感じで口笛を吹く
それを見た乾闥婆が無言でしゃがむと思い切り阿修羅の足首をつかみ捻った
「ンギャ--------------------!!!!;」
「キャ-----------------------------!!?;」
阿修羅の断末魔と阿部の悲鳴そして何故か中島と南も阿部と同じ女の子らしい悲鳴を上げた
「無理な体勢で受け止めたからですまったく…」
立ち上がった乾闥婆が溜息混じりに言って阿修羅を見た
「だからって…だからってだっぱ…ッおぉおお…;;;」
本間をまだ抱いたまま阿修羅が乾闥婆に捻られた足を浮かせて片足立ちで男泣き入りした
「でもよかったねー本間ちゃん無事で…」
南が阿修羅の腕に抱えられている本間を見てほっとした安堵の表情をした
「だな…怪我もないみたいだし」
中島の顔もほころんだ
「…もさかたがね」
「坂田?」
制多迦の言葉にしばらく間を開けて顔を見合わせた面々の目が見開き坂田がいる方向をバッと振り返った
「坂田--------------------------!!!!;」
目にしたのは清浄に向かい全力で駆けて行く坂田の後姿
「いかん!!; …っだぁッ!!;」
どしゃっ
作品名:【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた 作家名:島原あゆむ