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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「ぶどう園のある街」 最終回

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高見は美也子の優しさに心打たれてしまった。自分のすべてを母親のために使っている事が無理をしていると感じさせない自然な行動である事を深く感じ入ったのである。同じ女性として妻と見比べて勝ち負けを言う事は酷だが・・・天と地ほどの差があると思えて仕方なかった。

二月に入って入居している野村雅子が次第に落ち着きを取り戻して美也子とも会話を楽しめるような状況に変わってきた。
病気が改善されたというより、失われていた記憶の断片がつながってきたような感じに思えた。名前を間違えるような事はなくなっていたし、犬のショコラのことも思い出していた。思い出さないのは亡くなった夫のことと・・・小さい頃に失った娘の麻衣のことだ。
早く完全にすべてを思い出してそれらの記憶がつながってくるようになって欲しいと美也子は願っていた。
外出の許可を申請して美也子は雅子を住んでいた家の近くの古墳に連れて行くことにした。記憶の回復に役立つかも知れないと考えての事だった。

「野村さん、今日はお出かけしましょうね。もうすぐ車が来ますからそれに乗ってお散歩に行きましょう。いいですか?」
「ええ、いいわよ。どこに行くの?」
「野村さんのよ~く知っているところですよ。着いてからのお楽しみにしてね」
「どこだろう・・・お願いします」
ペコッと頭を下げた。