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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「哀の川」 第二十八話

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「先生はね、自殺したんだ。人生に絶望したって・・・お母さんが、僕たちには幸せになって欲しいって言われた言葉が沁みるよ。由佳、すべてを許して、僕を信じてくれよな。今は君しかいないから」
「何も聞かないわ・・・今のあなたが好きだから。由佳はこれからも変わらないままだから、純一さんもずっと変わらないでいてね」

若い二人は、短い間にたくさんのことを経験した。人として大切なことも教わった。男として大切なことも身につけた。女として必要な優しさも教えてもらった。まっすぐに前を向いて歩くことだけが、これからの二人に残されていることだった。

月日は流れ、純一は関西学院(かんせいがくいん)に入学した。あえて神戸大学を辞めて、私学にした。やっと住み慣れた実家から旅立つ日がやってきた。東京駅に直樹と麻子それに由佳が見送りに来ていた。純一を乗せた新幹線は静かにホームを離れ、手を振る三人はずっと見えなくなるまでそこにいた。
帰り際に、由佳に向かって麻子は言った。
「由佳さん、私たちの家に遊びに来てね。もう家族みたいに思っているから・・・娘が欲しかったし、ね来て頂戴ね」
「はい、おば様、ありがとうございます。時々寄らせていただきます」

麻子は純一が居なくなった寂しさを、由佳との時間で慰めたいと思っていた。由佳も純一のいない寂しさを麻子と話すことで埋められそうに感じていた。二人は親子のように打ち解けあえる関係にすぐになった。