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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「哀の川」 第二十八話

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「純一さん、自分を責めないで下さい。あなたのせいじゃないですよ。環は最後に好きな人と結ばれて子供まで出来たんですよ。そのことは死ぬ前までは喜びだったはずです。自殺は事故が生んだ悲劇です。あなたのせいじゃないですから。環のためにも、今のお付合いしてらっしゃるお嬢さんと幸せになって子供を育てて下さいね。母からのお願いです。このメモはお墓に入れておきます。こちらへ来るようなことがあったら、参ってあげて下さい」

純一は優しい母親の言葉に救われた。しかし女というものは、年齢、所、時代に関わらず、そのような考え方をしているのかと深く感じ入った。

東京への帰り道由佳から携帯に電話があった。純一が鼻声になっていたので、泣いていたんだと知った。自分も悲しくなった。電話の向うで純一を気遣う優しさにまた泣けてきた。人間ってこんなに泣けるんだと、初めて知った。由佳に逢いたい、自分を抱きしめて欲しい、とそう強く感じた。

上野駅で由佳は待っていた。改札を出てきた純一に抱きついた。傍目をはばからずに二人は抱き合っていた。昔こんな光景がこの駅ではたくさん見られた。男と女の哀愁が漂う光景が似合う駅でもあった。