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アイラブ桐生 第三部 第三章 39~40

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 さしさわりのない世間話が少し続いた後、
澄子さんが、橋本さんと初めて会った時のいきさつを語りはじめました。
それはもう二合徳利が、二本ほど空になってからのことです。


 「もう、3年ほど前になるかな~。
 亭主とは死に別れたために、とうとうやりくりにも行き詰って、
 乳飲み子かかえたまま途方にくれていた時期があった。
 あっ、千華って言うの、うちの子は。
 あの頃はもう疲れきっていて、生きていく気力まで失いかけていた。
 生きていても仕方がないから、千華と一緒に死んじゃおうかな~
 なんてバカなことを、本気で考えていたのよ、あの頃は・・・・」


 食卓の上に、徳利が並びはじめます。
思い出話をはじめた澄子さんも、かなりの呑める口をもっています。



 「あんたが居た、あそこのドライブインの駐車場は、
 実は売春で有名な場所なの。
 トラックを停めて休憩をしている運転手さんたちを目当てに、
 そう言う女性たちが、夜な夜な決まって現れるの。
 もちろんお金で寝るのが目的だけど
 運転手さんたちが相手なら、手っとり早いし後くされもないし、
 あそこは、そういう危ない場所のひとつなのよ。
 そう言う話を、あるところから聞いた覚えがあったので、
 わたしも、生き詰まりきった時に、一度だけ行ったことが有る。
 覚悟を決めて行ったつもりだったんだけど・・・・
 やっぱり駄目でねぇ。」



 ため息を一つ洩らした澄子さんが、グイ呑みに残った酒を一気にあおります。
注ぎ足そうとして持ち上げた徳利は、いつのまにか空でした。
面倒だから、まとめてお酒をつけようか・・と
ふらりと立ち上がった澄子さんは、両手に徳利をぶら下げたまま
台所へ消えていきます。


 「そんな時のことだった。
 駐車場の入り口で私は、愚図愚図としていたら、
 ちょうど、そこへ酔っ払って帰ってきた橋本さんに、
 おいお前、ちょっと待てと呼びとめられたの。
 お前ェはこのあたりでは見かけねえ顔だが、見るからにど素人だ。
 ここでただ突っ立っていたんじゃ、朝になっても客は見つからねぇ。
 客が欲しいのなら俺が見つけてやると、きゃがった」