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アイラブ桐生 第三部 第三章 39~40

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 進退極まり、ついに覚悟を決めて綺麗に並べられた料理の前にすわりました。
本人が言うだけあって、なかなか気持ちのこもっている手料理の数々です・・・・
折角なので箸をつけようとした、その時でした。
3~4歳くらいのおかっぱ髪の女の子が、「ママァ~」と半ベソをかきながら
戸口から、ひょっこりと顔をみせました。



 「ほうら・・起きちゃった。
 寝かしつけてくるから、勝手に始めて頂戴」


 半分寝ぼけているおかっぱ髪の女の子を、ひょいと抱き上げた性悪女が
髪の毛を撫でつけながら、隣の部屋へ消えていきます。
もうまもなく日付も変わる時間です。
食卓の上に並べられた料理はどれも見るからに美味しそうなうえに、
深夜だと言うのに、なぜか食欲までもそそります。
手前に置いてある、煮物のサトイモを一つを頬ばりました。


 柔らかく、ほどよく味がついていました。
なかなかの味わい加減に、つい釣られて、次の皿にも手を伸ばしました。
野菜と肉を炒めたものですが、これもなかなかいけました。


 「へぇ~、なかなかにやるもんだ。
 昔から、見た目と性格は一致しないというけれど、
 そこそこに器量もいいし、料理の腕もまたまた捨てたものじゃない。
 これで性格が良ければ、何の問題がないのだが、
 天は、二物を簡単には与えないようだ・・・」



 「わるかったわねぇ~性格が悪くて」


 いつのまに戻ったのか背後から、性悪女の声がしました。


 「もうその、性悪女はかんべんして。
 澄子と呼んで頂戴。
 自己紹介が遅れてしまってごめんなさい。
 見た通りに、4歳の子持ちで、亭主とは死に別れてしまった30女です。
 断っておきますが、今年なったばかりの30歳です。
 どう、これなら文句はないでしょう。
 あ、それから橋本君とは、ただのお友達という関係です。
 でもそれ以上の、細かいことは聞かないで。」


 尋ねる前に、しっかりとクギを刺されてしまいました。
聞くなというのであれば、今度はこちらが会話のきっかけに困ってしまいます。
こちらも橋本さんとは袖をふれあう縁で、10トントラックに便乗しているだけの間柄です。
結局、酒と肴をつまみながら澄子さんの話の聞き役にまわりました。