アイラブ桐生 第三章 36~38
「あれっ。、まぁ?さっきのお客さん。
まぁ・・・・岡部くんに橋本さんまでご一緒に登場ですか。
どうしたのさ。
お二人揃っての酔っ払いぶりは、いつものことだけど、
3人そろって再びのご来店とは?、」
この二人の酔っ払いは、群馬県からの長距離トラック便の運転手です。
九州に来るたびに「またぎ」には必ず顔をだすという常連です。
「俺らがここに顔をだすのは、いつものことだが、
おめぇは、まったく初めて見かける顔だ。
悪いなぁ、悦子ママ。
此処へ来る途中で軽く飲むつもりだったんがだが、
今日はこいつがすっかりと切れちまって、酔っ払い過ぎてこの有様だ。
で、なんだっけ。
入口で出合った、この兄ちゃんは・・・」
「あんた達と一緒で、
この人も、またぎの名前に魅かれて、ここへ初めて来たお客さん。
へぇ~、奇遇だねぇ、三人とも同じ群馬県なんて。
もっとも、このお二人さんの本当の狙いは、
この先で営業をしているお色気たっぷりの、
別嬪のお姉さんたちのはずだけど。
ねぇえ、そうでしょう、橋本くん!」
橋本と呼ばれた白髪交じりの角刈りが、
それに応えてニタリと笑いました。
「まぁまぁ、酒には女がつきものだ。
寂しい船乗りは、港ごとに女を作って置いておくもんだ。
女のひとりやふたりは、長距離航海をする船乗りの、
甲斐性ってもんだ」
「呆れた。
ひと一倍の愛妻家が、何寝言を言ってんの。
この人、この歳をして、
つい最近、4人目の赤ちゃんが生まれたばかりなんだから」
「子供は何人つくろうが、大きなお世話さまだ。
おいらが好きで作った、愛の結晶だぁ。」
悦子ママに冷たい水をもらって、一気に飲み干した岡部という青年が
座敷に座り直すと、ぶつぶつと愚痴をこぼし始めました。
「まったくほんとに、頭に来たぜ。
午前9時に必着だというから、最後は高速道路を自腹で飛ばして
倉庫にやっと到着をさせたんだ。
ところがあいつらときたら、順番待ちだから後ろに並べときやがった。
あげくに、荷物がおろせたのは12時過ぎのことだぜ。
延々3時間も、荷物降ろしの順番待ちで運転席にかんずめのまんまだ。
なんのための9時必着だ。
指示を出した奴も悪いが、受け取る倉庫のあいつらの態度も悪い。
運転手を何だと思ったいやがるんだ。
あぁ~腹が立つ、くそ。面白くねぇ~」
作品名:アイラブ桐生 第三章 36~38 作家名:落合順平