アイラブ桐生 第三章 36~38
肩を組み、かろうじて支え合っている二人の
酔っ払いとの遭遇です。
右に避ければ右へよろけ、左に交わそうとすると、
この二人も左によろけてきます。
二人とも悪気はないようですが、見た目以上に酩酊です。
「わっりぃ、わりぃ、おれたちは、そこの店に用があんだっぺ・・」
またぎの格子戸を指さして、
白髪まじりの角刈りがかろうじて足をふんばりながら
店の前に仁王立ちになりました。
すっかりと酔ってしまい、いまにも前に倒れ込みそうな連れの青年を、
必死に襟首をつかみながら、引き起こそうとしています。
「だから言っただろうが、お前はただの呑みすぎだろうがぁ・・・・
そんなことじぁ、駄目だんべぇ~」
危なっかしい二人の足取りを見て、軒下へ寄ってやり過ぎしたときに、
酔っ払いの口から出た、群馬県特有のなまりである
「だんべぇ~」を耳にしました。
異郷で聞く、懐かしい上州弁そのものです。
「あれ・・・おたくらは、もしかして群馬の人?」
真っかに充血した目つきの青年が、振りかえりました。
「あうん、そうだい。俺らは群馬だぃ。
そう言う兄ちゃんはどこだ。
もしかしたら、まさか、おめえも群馬けぇ?」
間違いなく久し振りに耳にする上州のなまりです。
しかも2年ぶりに聞く、正真正銘の故郷”だんべぇ”調のなまりでした。
そのままの成り行きで、3人でまた「またぎ」の格子戸をあけました。
作品名:アイラブ桐生 第三章 36~38 作家名:落合順平