アイラブ桐生 第三章 36~38
10トントラックの助手席に乗ったのは、
まったく生まれて初めての体験です。
その視線の高さに、まず驚きました。
通行人の頭の位置が、運転席の足元よりも下にあります。
前方のすべてに障害物はなく、すべてが開けて広がりました。
乗用車の屋根などは、私の足の位置よりもはるかにをヲ走っています。
大型トラックはこれらのすべてのものを、見下ろしながら走ります。
昨夜酔いつぶれた岡部くんは、1時間ほど早く起き、
栄養ドリンクを片手に4か所の荷物を積みに、早朝から出発をしました。
再会するのは北九州の門司の予定です。
同乗させてもらったのは、
白髪交じりで角刈りの橋本さんのトラックです。
こちらは九州に点在する家電メ―カの工場と倉庫、
それらに関連をした3か所を回ります。
橋本さん曰く、この積み込みこそが九州での最大の試練になるそうです。
数か所で積みこむということは、それぞれの場所での
ロスタイムを含んだ積み込み時間が、何度も
繰り返されることを意味します。
順調に進めばいいのですが、
待たされることも度々あり、数時間から長い時には、
半日近く待たされることもあるといいます。
倉庫や物流センターなどは、その日のうちに出荷すれば
仕事は終わりですが運転手たちは、
荷物を積み込んだ以降が勝負になります。
積み込み時での時間待ちなどで、
ロスした時間を取り戻さなければなりません。
大手になればなるほど、倉庫の管理や合理化には熱心ですが、
荷物の時間待ちで、運転手たちを遊ばせていることには、
意外なほど無頓着です。
午前9時に到着をした最初の倉庫では、積み込みはすこぶる順調でした。
二軒目は少し手間取り、1時間ほどの待機時間がありました。
「しかし本当の問題は、次の物流センターだ。」
作品名:アイラブ桐生 第三章 36~38 作家名:落合順平