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アイラブ桐生 第三章 36~38

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 それは、鹿児島の流通団地の中にある、
大手の家電メーカーのことです。
九州の南部一帯を一手にカバーする、最大拠点の巨大倉庫です。
郊外ですが比較的広い道路には、もう数十台もの大型トラックの
行列が見えました。
しかもそのすべてが、路上駐車のような形で一列に並んでいます。



 「やっぱり今日も、手こずりそうだ・・・」


 ここはいつでも決まって、同じ形で渋滞をするそうです。
倉庫のはるか手前からこの渋滞は始まって、
積み込みのプラットホームまでトラックの車列は、延々と続きます。
数か所にあった物流倉庫を一つにまとめて合理化したために、
集配業務と全国発送用の大型トラックのすべてが、
ここに集まりはじめたせいでした。



 「それにしても今日は、いつになく多い・・」


 最後尾にトラックを停めた橋本さんが、
車を降りると、守衛所へ向かって一目散に駆けだしました。
通過をするたびに、儀礼のようにおこなう伝票と書類の確認作業でした。



 最初の第一関門を無事に通過をすると、
橋本さんのトラックは、行列をしているトラック群を横目に見て
巨大倉庫の中の道をさらに奥に向かって進みはじめました。
ここでは、正面入口、中間部、さらに最奥部と
計3か所から荷物が出されます。
最初に行われてたチェックは、入場許可みたいなもので、
さらに第2、第3の関所があると橋本さんは笑っています。

 「ハンコばっかりを、ペたペた押してあっちへ行け、
 こっちだのと指示ばかりが出る。
 肝心の荷物まで、そう簡単には辿りつけねぇ、
 運転手は荷物を求めて、毎度のようにたらい回しだ・・
 そういう処だ、この倉庫は。
 でっかすぎて、誰ひとりとして手に負えないほど大雑把すぎる世界だ。
 なんで、こんなにもでっかい倉庫を使ったと思う?
 街中の倉庫をいくつか整理をしたら、
 こんなでっかい物流センターを建てても充分、おつりがくるからだ。
 こんな辺鄙な、ど田舎の土地なんか、二束三文だぜ。
 いい思いをして、儲かったのは会社だけで、
 運転手たちは、四苦八苦だ」


 10トントラックは、複雑に引かれた誘導線をなぞりながら、
徐行速度のまま、倉庫群の最深部・一番奥へと進みます。
色分けされている誘導線を見落としたら、あっというまに
迷子になってしまいそうです。