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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「ぶどう園のある街」 第九話

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「あなた、美也子に好きな人が出来たようですよ。気付いてらした?」
「本当か?そんな話聞いた事がないぞ。お前の勘違いなんじゃないのか?」
美也子が出て行ってから母親は夫にそう話しかけていた。

「いいえ、違いますよ。あの子今までどこへ行くにしても仕事のときのような普段着だったでしょ?今日は全然違っていたし、化粧も入念にしてたわ。きっと好きな人に逢っているのよ」
「それは気にしなかったな・・・なるほど、そういえばそう思えるな」
「ねえ?私のためにあの子はずっと我慢してきたのよ。相手がどんな人だか解らないけど、怒らないであげて欲しいの」
「おれが怒るって言うのかい?」
「男親でしょう?そうなんじゃないのかなって思ったから」
「美也子はもう30だぞ。親がどうのこうのって言える年じゃないだろう?好きにしたらいいよ」
「そうね、30になるのよね・・・結婚して欲しいって願うけど、余りそれを言うと負担に感じるかしら?」
「言うなよ、自然に運んで時期が来れば結婚するって・・・今騒ぐと壊れるかも知れないからな」
「介護のお仕事も大変そうだから、家庭との両立を考えたらなかなか難しいわね・・・そのことで悩まなければいいけど」
「おいおい、そこまで考えるのは早いぞ!まずは好きな人との時間を大切にしてくれればそれでいいじゃないか」
「あなたは寛容な方なのね。感心しましたわ・・・」
「おれだって、お前との時間を大切にしているじゃないか・・・同じだよ」
「あなた・・・」