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てっしゅう
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「ぶどう園のある街」 第九話

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高速を降りて高見の車は駅地下の駐車場に入った。専用のエレベーターを使ってロビーのある15階まで上がった。
ホテルが入っている駅ビルは12階までがデパートと専門店街になっていて15階から上がホテルのスペースになっていた。
13階と14階は飲食店の専門街になっていた。

ラウンジスペースにあるカフェでコーヒーを頼んでソファーに座って高見は話し始めた。

「ここは落ち着く雰囲気でしょ?どうですか」
「ええ、とっても素敵です」
「気にいってもらえてよかった」
「ずっとこういうところに来る縁がなかったから、とっても嬉しいです」
「そう、これからは時々誘いますよ。いいでしょ?」
「はい、でも・・・普段の場所で構いません。高見さんとご一緒なら嬉しいって・・・そう思いますから」
「ボクも一緒ですよ。あなたが今はすべてに思える」
「どういうことなんですか?」
「妻と離婚しました。家を売る事になったけど今はすっきりとしてよかったと思っているんだ。子供は大きいから好きに会いに来るだろうし会わないかも知れないけど、束縛出来るものじゃないからね。これからは美也子さんが一番大切な人になる。歳が離れているのに厚かましいけど付き合ってください。誰にも負けないぐらい大切にします」
「高見さん・・・嬉しいです。年のことは気になさらないで下さい。今の高見さんは素敵なんですから。それより私は何も知らない田舎娘ですよ。高見さんが気に入ってくださるかどうか自信が無いです。母親が身体障害者なので離れて暮らす事は出来ません。それでも構いませんか?」

美也子はたとえどんなに好きになっても母と父から離れて暮らすような結婚は出来ないと考えていた。理屈ぬきに母親の存在をそういう風に捉えていたからだ。10年間の介護の末回復した母は自分にとって青春を共に過ごした唯一の人だったからなのかも知れない。