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てっしゅう
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「ぶどう園のある街」 第九話

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ヒールの高い靴は歩きにくい。ぎりぎりになってから家を出たので坂道で転ばないようにゆっくりと歩いて5分ほど約束の時間に遅刻してしまった。
美也子の姿を見て高見は車から降りてきて手を振った。信号が青になって美也子は駆けて高見の傍まで来た。

「ゴメンなさい、遅れて・・・」
「大丈夫だよ。今日は見違えたよ・・・普段のキミじゃないみたいだ」
「ほんと?恥ずかしい・・・」
「ぜんぜん、とっても綺麗だよ。さあ乗って」
「はい」

助手席に座った美也子は高見の顔を見た。

「どうしたの?何か着いてるかい?」
「いいえ、そんなんじゃないの・・・」
「安心した。どこに行こうか・・・ゆっくりと話がしたいからホテルのラウンジにでも行くか」
「駅前のですか?」
「違うよ、セントラルステーションだよ。ほらあの高いビルにある」
「行ったことがないので知りませんが、高級ホテルですよね?」
「この辺じゃな。キミに相応しいと思ったからそうしよう」
「不釣合いですよ、私なんかだと」
「そんな事ないよ。ボクには一番なんだから、美也子さんが」
「高見さん・・・」
それ以上は言えなかった。恥ずかしかったからなのか、はしたない事だと思ったのか、うつむいて黙ってしまった。