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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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森林(もり)のサカナ祭り

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 岬のほぼ突端に建つマンションは十四階建てで、ぼくの家は最上階の角部屋だ。南に面した円形のバルコニーからは朝日も夕日も見ることができるし、街の半分が見渡せる。この街は半島のような形になっていて、西側は広い砂浜が続き、それに沿うように街が開けている。東側はリアス式海岸で、小さな入り江がたくさんある。
 ぼくはマンションの脇にある細い道から、早速海岸へ下りてみた。波打ち際までいっきに走ろうとしたとき、目の前をさっと何かが横切った。びっくりして後ずさりすると、足の裏に何かを踏んづけた感覚があった。
 拾い上げると、それはかなり腐食の進んだ薄い鉄製の看板のようで、よく見ると文字のあとがある。
「魚付き? 保…安林……?」
 魚のついた林? ぼくは魚が木に登っている様子を想像して吹き出した。
 けれどもなぜか気になったので、それを持って帰って調べてみた。するとそれは魚を育てるために守る森林のことだと書いてあった。
 でも、なぜ森林を守ることが魚を育てるのか、この時のぼくにはまだ理解できないでいた。
「いやねえ、へんなもの拾ってきて……」
 机の上に飾ったら、お母さんは眉をひそめたけど、ぼくはこの看板がなにかをぼくに訴えているような気がして、捨てる気にならなかった。