「仮面の町」 第十話
弘一は今までの経緯を話した。そして自分がしていることの意味も強く語った。
「どうでしょうか?お気持ちが変わりませんか?」
「天木さん、お話はとても参考になりました。何故警察が私の判断を曲げたのか疑問ですが・・・もう一度調べてお返事させてください。一週間したらこちらから連絡させていただきますので、連絡先教えてください」
「はい、解りました。こちらが電話番号です。日曜日以外は仕事ですので一応仕事先も書いておきます」
「正直言ってあなたがそれほどまでにこの問題に関わってらっしゃることが理解出来ないのです。身内ならともかく他人のことでそこまで一生懸命にされていることが不思議に感じるんです」
「そう言われますよ、皆さんに。それに・・・危険だとも言われます。だからこそやらないといけないって思うんです。他人事じゃないですよ、この町で起こっていることは全部操作されているんです・・・それに気付いて欲しいと行動を起こしているんです」
「勇気がありますね。まだ若いのに・・・羨ましいことです。こんな老人は僅かな夢しか頼れませんから・・・」
淋しげに語る長井医師の本心を弘一は垣間見たような気がした。
作品名:「仮面の町」 第十話 作家名:てっしゅう