もう一度、結び直したい、夫婦の絆を
凛太郎は長年綾乃と夫婦をやってきた。
しかし、大輔さん・・・て?
初めて聞く名前だ。
凛太郎はどうしようかと思った。しかし目の前におかれてある日本酒、甲羅酒を飲もうと頼んでおいた熱燗をコップに注ぎ、ぐびぐびと飲み干した。そして妻に話す。
「そうだね、蟹の身、一杯取ってあげるからね」
その後、ここまで共に生き頑張ってきてくれた妻のために、凛太郎は三杯酢の器の中に身を一杯ほぐし取る。
そんなことをしながら、なぜかふと思い出すのだ。
あれは父が逝く前のことだった。
凛太郎が病室を訪ねた。その時、父はやぶから棒に言った。
「なあ、凛太郎、お母さんが死ぬ前にな、訊いてきたんだよ」
凛太郎は深く考えず、「何を?」と父に問い返した。
すると、父は少し照れ臭そうに・・・、いや、実に寂しそうに。
「あいつなあ、亡くなる前に、洋介さんは・・・どうしてるの? って・・・訊いたんだよなあ」
母にとっての洋介さん、凛太郎は知っていた。
父との結婚前の、母の元彼だ。しかし不慮の事故で亡くなったとか。
こんな話しを叔母から聞いたことがあった。
作品名:もう一度、結び直したい、夫婦の絆を 作家名:鮎風 遊