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牙狼<GARO> -MAKAISENKI-外伝・落日の都

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 浩司の言葉を右手で遮りグラスに入った水を飲み干し、マキナは薄く笑って席を立った。瑠花のもとまで行きジルバを取り上げると抗議の視線を送る彼女をあしらい、入り口で一度振り返り「また来るぜ」と手を上げて『Golden Wolf』を出て行った。

『…マキナ。無理をしないで』

「おいおい、お前のキャラじゃないだろ、それは」

 車には乗らず、マキナは十数分ほど歩き、何の変哲もない壁の位置でジルバを差し出すと水面に入り込むかのように音も無く出現した空間へと入っていった。少し歩いた所で視界が開け。漆黒の空間にぼんやりと白く照らされた間が現れた。守りし者達の拠点、東の番犬所である。そこに白い衣服を身に纏った男が居た。年齢は計り知れずその超然とした雰囲気は、見るものを畏怖させる。彼が現在の東の番犬所の神官だ。

「よく来た、桐生マキナ。元老院から言付けは既に届いている」

「なら、落日の都への通行証を」

 しかし、神官は頷かなかった。不審げにマキナが首を傾げているとその物憂げな伏し目がちの目をさらに細めて目の前の白の男性は語り出した。

「二十二年前、落日の都へ向かった魔戒騎士が居た。彼は闇に堕ちた魔戒騎士との壮絶な戦いの末、邪悪の手に都の力が渡らぬよう、自らの命もろとも鍵を封印した。そう、そなたの父。桐生ゴウトがな…」

 知らず、マキナの表情が固くなる。先代のラゴウでもある己の父の過去は、母から聞かされた。当時まだ幼かったマキナはそれを聞き、魔戒騎士としての宿命を憎んだ。守りし者として多くの命を助けるために自らの命を賭して戦わなければならないという事を幼い心に現実として刻み付けられてしまったのだから。
 以来、マキナは強くなろうと決心した。人々の命も、そして己の命も守れるようにと。そうして不転騎士の称号を継承し、元老院直属の魔戒騎士にもなった。それでも、とマキナはふと思うことがある。自分の選択は、時に大切なものと自分の命を天秤にかけてしまうのではないかと。命を捨てる覚悟がないだけでは無いか、という疑念が浮かび上がるのだ。
 不転、即ち不退転。騎士の称号の通り如何な戦いにも一歩も引かず戦う勇猛果敢な騎士に相応しいのだろうかと。