「ぶどう園のある街」 第八話
妻の両親が無くなって姉と二人で遺産を分けてお金はそれなりに持っていた。今思うとその時期を境に態度が自分勝手になって来たと思える。
生活に困らない妻のことだから離婚には反対しないだろうとの目算はあった。そして話し合って離婚は成立した。
自宅の権利は共有だから処分して分割した。子供達は成人しているからそれぞれに選択を任せた。この一瞬に家族はバラバラになってしまった。
高見には愚痴をこぼしている時間は無い。コンビニの仕事は待ったなしにしないといけないから、疲れた気持ちを癒せるのは美也子との時間だけだと考えるようになっていた。
しばらく自分の都合でバタバタしていた高見は美也子との時間を持つ事無く一月が経過していた。美也子は誘われないからといって自分から声をかけるようなことはしなかった。どうしたのだろうかと不安になっていた時に、自宅へ電話が掛かってきた。
作品名:「ぶどう園のある街」 第八話 作家名:てっしゅう