「仮面の町」 第九話
「お父様、お気持ちは解ります。警察に出向いても状況は変わらないと思います。追い返されるだけですよ」
「じゃあ、どうしろと言うんだい?」
「もう一人の被害者は竹田佐織さんと言って女性です。その方のご両親と協力して告訴された方がいいと思います」
「竹田佐織は幼友達だったんです。小さい頃からよく遊んでいた。前は長草町に住んでいたんですよ。母親が再婚して今の石ヶ瀬に引っ越した。真人は佐織と会うためにバイクを買ったんだ・・・高校も行かずに仕事して・・・不良だったけどそういうところは純真な奴だった・・・佐織は、新しい父親とそりが合わずに、ぐれて学校を中退した。毎日のように真人と会っていたようだった・・・お互いに好きだったんだ、未熟な二人
だったけど・・・思いは強く真剣だった・・・一緒に天国に行けて今は幸せなのかもしれない・・・」
そういうと堪えていた感情を爆発させるように父親は嗚咽を漏らし始めた。
優子も我慢できずに声を出して泣いてしまった。
作品名:「仮面の町」 第九話 作家名:てっしゅう