蒼い空と爽やかな風
私はその闇の中で、石沢さんにキスをしたのだった。その後も暗い場所をボートが通過する度に、私は同じ行動をとった。最後尾の席は、そうする上では余りにも好都合だった。
その後、私は石沢さんと何度かドライブをした。
「石沢さんは学生でしたね。何を勉強しているんですか?」
「わたしは医療短大の学生です。卒業したら看護師になります」
「実習が多いでしょうね」
「はい。そうです」
私には恋人がなかった。石沢さんは友人のひとりという気持ちだった。彼女は可愛いと云われていたが、私は相変わらずそうは思わなかった。東京ディズニーランドではキスをしたが、その後のドライブではしなかった。朝出かけて明るいうちに帰って来ることもあったが、それよりも大きな理由は、彼女への恋愛感情がないからだった。
「石沢さんのご両親は何歳ですか?」
「わたしの母は小学生だったとき、亡くなりました」
「病気で?だから看護師になろうと?……」