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アイラブ桐生・第三部 第三章 34~35

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 おバあが手造りをしてくれたお弁当を抱えて、
出かける時間になりました。
斜面をだらだらと登っていくとコザの密集した
民家の屋根が見えるようになってきて、
そこから5分も歩けば、もう丘の頂上です。
眺望が利くことから、沖縄戦で最大激戦地のひとつとなった
小高い丘の頂きです。
しかしここには、すくっと伸びた数本の木が風に揺れているだけで、
それ以外には、何もありません。
ただただ、見晴らしの良さだけが眼下に広がっています。




 いま私たちが登ってきた道は、そのまま眼下をまっすぐにのびて、
民家の間をぬけてから、美浜の海岸にまで到達をます。
その先には白い波が立つ初夏の、青々とした東シナ海がひろがっています。


 「優花、せっかくの最後の休日だぜ。
 本当に、こんなところでいいのかい?」


 「いい。
 今日は、兄貴を一人占めにする」


 優花はそう言うと、
帽子をおさえながら私の隣に座り込みました。
優花は、本当に不思議な女の子です。
思っている以上に大人びているかと思えば、
他愛ないほど幼いところが残っています。
ようやく16歳になったこの女の子は、
気持ち良さそうにひとつ背伸びをすると
くるりと向きを変え、私の足元に寝転んでしまいました。



 遠くで花火か爆竹か、激しくはじける音が聞こえてきます。
街全体が本土復帰一色で、もう、
その歓喜のセレモニーが始まったかもしれないな・・・・
そう思った頃にもう優花は、真っ白のストローハットを顔に乗せたまま、
私の太ももの上で、気持ちよさそうに寝息をたてていました。




 誕生日が5月だという優花は、
この16歳から、初めて日本の国籍を取得をしました。
米軍基地が最優先をされて抑圧と無権利状態の中で、15年間にもわたって
無国籍で育ったこの女の子は、今日からは遂に待ち望んだ
日本の女の子に生まれ変わります。



おめでとう、優花。


 今日からは、名実ともに君も(晴れて)同じ日本人だ。
あれほど、みんなが待ち望んできた軍事基地抜きの
返還にはならなかったが、今日からみんな同じ日本人だ・・・・
そんなことを考えているうちに、いつのまにか私も
優花につられて、浅い眠りにおちていきました。