アイラブ桐生・第三部 第三章 34~35
また遠くから、エイサーの太鼓が聞こえてきます。
三線も響いてきました。
地謡(じうたい)まで聞こえてきます。
あまりもの音の近さに、おもわず目を覚ましました。
「みんなで来たぞ。見送りだ」
青年団員が目の前に立っていました。
いや、その背後にも沢山勢ぞろいをしていて、
盛装したエイサーたちが居並んでいます。
「ごめん。実は最初からそういう約束だった。」
優花がぺこりと頭を下げます。
「そういうことです、群馬くん。
お~い、みんなぁ、聞いてくれ。
明日は俺らの友人が、本土に向かって旅立つ日だ。
俺たちと一緒に、本土復帰を心から待ち望んでくれた
大切な友人のひとりさ。
気持ちをこめて、彼を盛大に送り出したいと思います。
さぁ、いくぞ。
これが俺たちの、晴れて門出のエイサーだ!」
一団が踊りはじめました。
狭い丘の上で、ひしめきあいながらの、エイサーの乱舞がはじまりました。
エイサー装束のいつもの青年団員が、泡盛を片手に駆け寄ってきました。
「とっておきの泡盛の古酒を持ってきたぞ。
門出の記念の一杯には、うってつけの、極上品だ!
こいつは、うちの親父が何かの時のために、秘蔵にしている上物だが、
こんな祝いごとの時にこそ、実にぴったりの酒だろう。
さぁ呑め、呑め。本土の友人!」
優花も寄ってきました。
「私も、飲みたい・・」
「やるやる、優花にもたっぷりとやる、遠慮なんかするな。
おまえのおかげで、レッドカード作戦が、
大輪の花を咲かせることができたのさ。
しかしこいつは、いつものお前のコークハイとは、ちょっと違うぞ。
この大人の味がわかるかな~お前みたいな、15歳に」
「16歳です!」
旗頭が激しく打ち振られて、
太鼓が鳴り響き、三線と地謡が一段と大きく響きます。
男も女も揃い衣装のエイサーたちが、力いっぱいいつまでも
丘の上で踊ってくれました。
ありがとう、16歳になったばかりの優花。
ありがとう青年団員たちと、たくさんのエイサーたち。
そして、ありがとう、そして、おめでとう。
本土への復帰を、27年目にしてようやく果たすことのできた沖縄県。
作品名:アイラブ桐生・第三部 第三章 34~35 作家名:落合順平