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最後の魔法使い 第一章 「南へ」

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地図も磁石はなかったが、アレンはロウア―サウスへはどう進めばいいのか分かっていた。魔法を使うと木々がアレンの耳にささやいて教えてくれるからだ。『地の魔法』のほとんどは学校で習ったが、アレンにしかできない魔法もいくつかあった。植物との会話もその一つだ。だれに教わったわけでもなく、アレンが小さいころから自然に覚えていた魔法だ。
普通『地の魔法』を使うには、は数行から、時には十数行の呪文を唱えないといけない。ロウア―の子供たちは学校で呪文や唱え方を習う。「地の魔法」はかつて大地の神々にささげる祈りであった。なので、省略するなどもってのほかなのだ。ロウアーがアッパーに勝てないのはそこだった。『火の魔法』は実力と経験次第で一瞬で魔法が出せる。戦いにおいては、どうしてもロウアーは不利だった。

歩き続けてもう何時間か経過した。このまま歩き続ければ、日が暮れる前にロウア―サウスにつくはずだ。アレンはもう一度呪文を唱えて、木々に尋ねた。
『あとどれくらいだと思う?』

『もうすぐ、もうすぐ。南へまっすぐ。』木々が歌うように返した。

『さっきもそう言ったじゃないか。』冗談交じりにアレンは心の中で言った。

『今度はほんと。森の端っこの大杉のおじさんが見える。もうすぐ、もうすぐ。』

魔法の効力が切れて、また森は静かになった。

日が陰り始めたころ、アレンはロウア―サウスの入り口に着いた。街の入り口は、『ロウア―サウス』と書かれた大きなアーチがまるで虹のようにかかっていた。守衛のようなものこそいなかったものの、アッパーの観光客用だろうか、「ようこそロウア―サウスへ」という蛍光色の看板がアレンの正面に立っていた。
故郷にはアーチどころか、まともに入り口と呼べるものすらないというのに、同じロウア―でもこうまで違うのか。アレンは思った。
「金持ちだからできる飾りだよ、これは。」
アレンは呟いて、アーチをくぐった。