小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

最後の魔法使い 第一章 「南へ」

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 
第一章 『南へ』

アレンは、ロウア―ウエストとロウアーサウスの間に位置する『ゲート・フォレスト』という森の中を進んでいた。
ゲート・フォレストは、街と街の境目としておかれている森だ。アッパーの方のゲートフォレストは整備がしてあって、大きな公園のようになっているが、ロウア―の方はただのうっそうとした、手つかずの森がどこまでも広がっているだけだ。ロウア-があまり街と街の間を行き来しないのは、ゲート・フォレストがあまりにも深く、入り組んでいて、時にはたどり着くまでの何日もかかることがあるからだ。

この国ではあらゆる面で、ロウアーはアッパーに「下流の者」として扱われた。居住地の決まりもその一つだ。首都「ヴィル」をぐるりと囲むように並んだ大きな街に住めるのはアッパーだけで、その街の外側を囲んでいるのがロウアー達が住む小さな町や村だ。
この居住地の配置には問題があった。首都へのアクセスだ。国民の権利として、ヴィルにはだれでも行けることにはなっているが、そこへたどりつくためにはロウアーは必ずアッパーの街を通らなくてはならなかった。多くの場合、ロウアーがアッパーの街に入るには許可証が必要で、それを入手することは今日(こんにち)では難しいことだった。事実上、ロウアーはヴィルへ入ることができないのだ。ヴィルへ入れないということは、国王と謁見することも、国議会を傍聴することもできないことを意味していた。この国ではアッパーが一切の政治を仕切っていた。ロウアーはただ決定事項を後から聞くだけで、意見を言うことすらできないのだ。

アレンの故郷のロウア―ウェストは一番小さな町だった。ロウアーの中でさえ、ロウア―ウェストは「田舎」だといわれていた。ロウア―ウェストから若者が出るとき、たいてい目的地はロウア―サウスだった。ロウアーサウスは一番賑やかな街だ。店や娯楽も十分にある。アッパーの観光客が「下々の生活ぶりを見る」ために訪れることもある、そんな街だ。
アレンが学生だったころに仲が良かったキースも、卒業した今はそこの大きな木工所で働いている。アレンは2学年飛び級したので、キースはアレンの2つ年上だ。
「…キースに会えるといいな。」
無理だよなぁ。アレンはため息をついた。追われている身で友人に会うなんて、とてもかなうはずはなかったが、1ミリでも希望があれば、それにすがりたかった。

途中に見つけた薬草のおかげで、アレンの足の痛みはいくらかやわらいでいた。先ほどの歩兵につけられていないかと、何度も後ろを振り向きながら、アレンは歩を進めて行った。幸い、ドラゴンが頭上を行くことも、アッパーの兵士に出くわすこともなかった。