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愛憎渦巻く世界にて

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 クルップの船から乗り移ってきた数人の騎士は、シャルルたちの船の甲板で暴れていた。誤射を防ぐために敵の矢は飛んでこないものの、その騎士たちが手当たり次第に、船員たちを殺し、その刃は今にもシャルルたちも襲いかかりそうだ。
 こぎ手が殺されたり、逃げ出したため、船のスピードは大きくダウンしてしまった。

 ゲルマニアは、騎士たちを殺そうと足を踏み出したが、騎士たちのすぐ近くまで来たところで立ち止まってしまった。ついこの前まで部下だった大事な存在を殺すことはできないようだった……。
「ゲルマニア様は離れていてください」
騎士たちは剣を振り回しながら、ゲルマニアを気遣った。
 そんな彼女の横を、ウィリアムの矢とメアリーの銃弾が通り過ぎていき、2人の騎士の頭部に命中する。矢と銃弾は、2人のヘルメットを貫通し、それを被っていた2人の騎士の息の根を止めた。ウィリアムとメアリーは、船尾の操舵輪近くで、騎士たちに狙いを定めていた。
 仲間の死を見た残りの3人の騎士は、ウィリアムとメアリーを先に殺すことにしたようで、彼らがいる船尾に向かっていった。その際、ゲルマニアのすぐ横を通ったのだが、彼女は何もできなかった……。

 ウィリアムが放った次の矢が、また1人の騎士の息の根を止めた。メアリーは、少し時間がかかる短筒の弾込めをしていた。2人の騎士は船尾への階段をのぼり始めた。
 そのとき、前にいた騎士の頭に斧が命中した。頭に斧が刺さった騎士は、前のめり倒れて即死し、すぐ後ろの騎士の行く手を塞ぐ形となった。立ち往生した騎士は、斧が飛んできた方向を睨んだ。

 なんと、斧を投げつけたのはシャルルだった……。ただ、意識して斧を投げつけたわけではなく、手が滑って飛んでいったことによる偶然の出来事のようだ……。どうやら彼は、マリアンヌを船内のどこかに隠れさせた上で、参戦することにしたようだ。ただ、唯一の武器であった斧を投げつけてしまったので、何も武器を持っていない状態だった。
「この野郎!!!」
騎士は怒り、ウィリアムとメアリーをあきらめ、シャルルを殺すことにしたようで、剣を振り上げながら、彼の元へ駆けていった。ウィリアムとメアリーからは段差による死角となっており、彼らがその騎士を倒すことはできなかった。ゲルマニア以外に彼を守る者はいなかった……。

 そのことをすぐに察知したゲルマニアは、すぐに決意を固め、元部下である騎士を殺すことにした。彼女は素早くその騎士に追いつくと、彼を斬首した……。何が起きたのかもわからないその騎士の頭部は、勢いをつけて飛んでいき、海にポチャンと落ちた……。首から噴き出した血が、シャルルとゲルマニアに降り注ぐ……。
「すまぬ!!!」
首が無い騎士の死体に、ゲルマニアは謝った……。シャルルは、ただ突っ立っているしかなかった……。

「早くこげ!!!」
ウィリアムがそう叫ぶと、こぎ手は持ち場に戻り、船のスピードは戻り始めた。こぎ手の何人かが騎士に殺されたため、こぎ手の人数は減っていたが、死の恐怖から、こぎ手は必死にこいでいたため、今までとそれほどスピードは変わらないかと思えた。シャルルたちの船は、既に北の方角に向いており、このまま突っ走れば、タカミ帝国の領海に逃げ込めそうだ。
 しかし、どうやら海流に逆らって進んでいるらしく、思うようにスピードが出なかった。さらに、クルップの船も北の方角に向いて進み始めたため、すぐにまた併走する形となってしまった……。変わったのは、左右の位置が逆になったことぐらいだ……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん