小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

愛憎渦巻く世界にて

INDEX|92ページ/284ページ|

次のページ前のページ
 


 クルップの船から、砲弾だけでなく矢も放たれ始めた。シャルルたちの船は既に北の方角を向いて進んでいたが、クルップの船のすぐ前を横切る必要があるので、接近していく形となっていた。なので、砲弾や矢が命中しやすくなっていた。
 ついに1発の砲弾が、船の横っ腹に命中してしまい、船が今までにないほど大きく揺れる。幸い、海面よりも高い位置だったので、浸水は免れた。だが、大きなダメージには違いない。
 飛んできた何発もの矢は、船員たちを次々に殺していく。
「ウッ!」
ウィリアムの隣りにいた航海士にも矢が命中し、胸を打たれた彼は、それからすぐに死んでしまった。操舵手は必死の形相で操舵輪を握る。
「ウィリアム様、伏せてください!!!」
メアリーが、弓矢を構えているウィリアムを無理やり伏せさせた。
「シャルル、マリアンヌを連れて船の中に隠れていろ。一番狙われているのは彼女だ」
ゲルマニアはそう言うと、自慢の剣を構えた。シャルルは、マリアンヌの手を引いて、船の中に入った。甲板を通過する際、矢がすぐ近くの床に突き刺さった。



「くそ!!! またやられた!!!」
代わりの操舵手がウィリアムの矢によって死んだのだ。代わりの操舵手が次々に殺されており、クルップは怒り狂っていた……。
「おい!!! 誰か早く代われ!!!」
彼は船員たちに向かって叫んだが、船員たちはウィリアムの矢を恐れ、誰も操舵輪のところへ向かおうとはしなかった……。
「くそ!!!」
彼は自分で操舵輪を握ることにした。剣を構えながら操舵輪に向かい、なんと、飛んできたウィリアムの矢を跳ね返していた。

 無事に操舵輪のところに着くと、彼は操舵輪の下に伏せ、伏せたまま操舵輪を回し始めた。なぜなら、死角となるからだ。
 しかし、クルップが操舵輪を回し始めたのは、シャルルたちの船が、彼の船のすぐ目の前を横切り始めたときであり、

   ドーーーン!!!

 彼の船の船首が、シャルルたちの船の船体の横に激突した……。双方の船が激しく揺れる。
 横幅があるガレー船は転覆しにくいため、船体に傷がついたぐらいで済んだ。だが、彼の船は、船首にある帆とその帆のための小さいマストが破損してしまった。帆はまだ何枚かあるが、彼をさらに怒らせることとなった。しかし、すぐに彼の怒りは少しだけやわらいだ。
 なぜなら、勇敢な数人の騎士がシャルルの船に乗り移ったからだ。後に続こうと、他の騎士たちもシャルルたちの船に乗り移ろうとしたが、すでに距離ができており乗り移るのは無理だった。それでも、かっこつけようとした1人の騎士がジャンプして乗り移ろうとした。しかし、半分ぐらいしか届かず、そのまま海に落ちた。その騎士は、鎧などの重さにより海に沈み、浮き上がってくることは無かった……。
「ゲルマニア様以外をどんどん殺せ!!! 皆殺しだ!!!」
彼は、シャルルたちの船に乗り移った騎士たちにそう叫んだが、数人の騎士は、そんなことはもうわかっているという様子で、もう暴れ始めていた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん