愛憎渦巻く世界にて
ドアをノックしても返事が無いので、シャルルとマリアンヌとゲルマニアは、ウィリアムとメアリーがいる船長室に入った。
ウィリアムとメアリーは既に起きており、2人はテーブルでチェスをしていた。盤面を見ると、互角のように見えたが、
「チェックメイトです」
メアリーが勝った。
「やれやれ、そう来るとは思わなかったな」
ウィリアムはそう言うと、シャルルとマリアンヌとゲルマニアに挨拶した。メアリーも挨拶し、
「そろそろ朝食ですね。持って参ります」
そう言って、チェスを片付けようとした。だが、
「待て、メアリー。朝食なら、給仕にでも持ってこさせればいい。私とチェスをしないか?」
ゲルマニアがメアリーに、チェスの勝負を挑んだ……。「ゴゴゴゴゴ!!!」という空気がその場に満ちる……。
「チェックメイト」
メアリーが得意気な口調で言う。彼女の顔はどや顔で、彼女の前にいるゲルマニアは、顔を赤くしていた……。
「もう一戦だ!」
ゲルマニアはそう言うと、駒を並べ直し始めた。
「まだやるの? 今ので、あなたは0勝13敗の13連敗ですよ?」
「うるさい!!!」
朝食のオートミールは、メアリーは勝負しながら食べ終えたが、ゲルマニアは一口も口にしていなかった……。
「ゲルマニアもあきらめが悪いな」
これはシャルルの言葉で、
「なんだと!!!」
ゲルマニアは激怒した……。そして、ゲルマニアは勝負を忘れ、シャルルを追いかけ回し始めた……。
走り回るシャルルとゲルマニアを、マリアンヌは羨ましそうに見ていた……。そんなマリアンヌの様子に、ウィリアムとメアリーは気づく。
夜になり、シャルルたちや船員たちは、昨夜と同じメニューのディナーを食べる。シャルルたちは昨夜と同じように、船首でたむろした。ゲルマニアとメアリーのチェスの勝敗だが、結局、ゲルマニアは1勝もできなかった……。「参りました」とは言わなかったが、負け惜しみも言わなかった。
「ごちそうさま!」
シャルルが食べ終えると、ウィリアムとメアリーが立ち上がり、
「シャルル、ちょっとついて来てくれ?」
そう言って、2人はシャルルを船長室まで連れていった。
マリアンヌは不安そうに、シャルルを見届けていたが、ゲルマニアが気をきかせて、マリアンヌに話しかけた。