愛憎渦巻く世界にて
買い物を終えたシャルルとマリアンヌとゲルマニアは、たくさんの食べ物や水が載った荷車を押していた。たくさん買い物をしたので、荷車を貸してもらえたのだが、まだ何往復もしはければならないのだ……。
何往復かした頃、シャルルとメアリーが、大勢の雇った男たちを連れて来た。シャルルたちが乗る船で働く船乗りだ。ゲルマニアは、雇った全員を見て回ったが、文句は無いようだ。
シャルルたちは、荷物運びなどの出航準備を雇った連中に任せ、船のかじのところで、話を始めた。
「不景気のせいらしく、すぐに人が集まったぞ」
「若い男たちが戦場に行ってしまったことや、戦火による流通の支障などのせいだな」
「この戦争が終われば、元通りになるんじゃないのか?」
「もう手遅れかもしれんが、やれることはやらんとな」
そして、徹夜で出航準備をした結果、明け方には出航できるようになった!
シャルルたちはすぐに出航することにし、船のいかりが引き上げられた。そして、埠頭からロープを外し始めたときに、
「おーい!!! これをアンタに!!!」
酒場で土下座したあの男がやって来た。彼はウィリアムにネックレスを渡した。
「私の妻が、真珠と余りの絹糸で作った物です。お礼の品なのですが、お気に召しましたか?」
真珠が朝日に照らされて輝いていた。
「きれいな真珠だな。ありがとう、大切にするよ」
ウィリアムのこの言葉に、男は喜んでいた。
「お気をつけて!」
男がそう言ったとき、最後のロープが埠頭から外され、こぎ手がオールを一斉にこぎ始めた。シャルルたちが乗っているガレー船は埠頭からどんどん離れていった。男は、シャルルたちの船出を見送ってくれていた。
これから、シャルルたちの船は、タカミ帝国へと向かうのだった……。