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愛憎渦巻く世界にて

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「では、行ってくる」
ゲルマニアが、シャルルとマリアンヌを連れて船から降りると、ウィリアムとメアリーも船から降りた。
「どうした?」
「私たちは人手を集めてくるよ」
ウィリアムとメアリーは、船員を集めてくるようだ。ガレー船には、こぎ手などが必要だからだ。
「ああ、それも必要だったな。体が丈夫そうで、人相が良い奴を集めてこいよ」
「任せておけ」
ウィリアムとメアリーは、先ほどの酒場へと歩いていった。
「何往復かしなければならないが、おまえや姫は大丈夫か?」
ゲルマニアはそう言ったが、もちろん、シャルルとマリアンヌは大丈夫だと返事した。



 ウィリアムとメアリーは、船員を集めるために、さっきの酒場へとやって来た。あの船を売ってくれたドレスデンに、彼が今まで雇っていた船員についてのことを尋ねるためだ。今までの船員のほうが、あの船をうまく扱えるはずだからだ。酒場は混み合っており、少し進みづらかった。
 しかし、カウンター席にも、店内のどこにも、ドレスデンはいなかった。
「あれ? さっきのタカミ帝国のおぼっちゃんじゃないか?」
酒場のバーテンダーが、店内をうろうろしているウィリアムたちに声をかけてきた。
「すみません。ドレスデンさんを知りませんか?」
ウィリアムはバーテンダーに尋ねた。
「ああ、あの人ならもう帰ったよ。どうしたんだい?」
「ドレスデンさんが今までに雇っていた船員を雇い直そうと思いましてね。スコッチを1杯ください」
ウィリアムはそう言うと、カウンター席に座った。メアリーは立ったまま、店内を見回していた。

 バーテンダーは、スコッチをグラスに注ぎ、そのグラスをウィリアムに渡して代金を受け取った後、
「なるほど。じゃあ、ここで呼びかけてみたらどうだい? 彼が雇っていた奴もいるし、船乗りになりたがっている奴もいるよ」
そう提案した。ウィリアムは振り向いて、店内を見渡してみた。
 店内には、船乗りや町にある造船所で働いている男たちだけでなく、やけ酒を飲んでいる元船乗りや高い志を持っていそうな若者などがいた。ウィリアムはそれを見た後、

「私の船で働きたい者はいるか!?」

大声でそう呼びかけた。その透き通った大声は、酒場内に響き渡った。
 店内にいた全員にウィリアムの声は届いたが、多くの人間はポカンとした様子でウィリアムを見ていた……。いきなり、まだ15歳の少年が求人をしたのだから、当然の反応である。そこで、
「私はタカミ帝国の貴族の者だ!!! 祖国に帰るために私が買い取った船で働きたい者はいるか!?」
ウィリアムは、金貨が詰まった小袋を見せつけながら、もう一度呼びかけた。すると、

「働かせてください!!!」
「俺を雇えば、あっという間に海を渡れるぜ!!!」

 就職希望者が殺到した……。就職希望者は、店内にいた男たちだけでなく、話を聞きつけて店外からやって来た男たちもいた。その殺到具合に驚く暇もなく、採用予定人数より大幅に越えてしまい、厳正な採用選考をしなくてはならなくなった……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん