愛憎渦巻く世界にて
ムチュー王国首都にある王城の地下深くの部屋に、その哀れな少女はいた……。
その少女は、10代中ごろの年齢で、ウェーブがかかった茶髪をしていた。髪の長さはシャルルぐらいだ。いかにも可愛らしいお姫様という雰囲気を醸し出しており、優雅な顔つきをしている。彼女は、立派で豪華な身なりをしており、ムチュー王室の紋章が衣服に縫い付けられていた……。
ここまで言うとわかると思うが、彼女は、このムチュー王国のお姫様なのだ……。彼女の名前は、マリアンヌという。
先に相手の王女を殺したほうが勝ちというこの戦争が始まると、彼女はすぐに、この地下室に入れられた。か弱い彼女が暗殺されるのを防ぐために、安全な場所で保護しておかなければならないからだ。
当然だが、マリアンヌ自身は、この処置を嬉しく思っていなかった……。部屋の内装は豪華だが、窓は無く、牢屋にいるのと変わらなかった……。食事や家具や本なども豪華だが、一人寂しく食べたり、一人ぼっちで時間をひたすら過ごさなければならない……。
マリアンヌは今すぐにでも、自由の身になりたかった……。そこで彼女は、父親である国王に手紙を書いたり、面会にきた母親や跡取りである弟に頼んでみたりしたが、全て時間の無駄(時間は有り余るほどあるが)に終わった……。やはり、この戦争が終わるまでは、絶対にダメのようだ。
ダメな理由は、彼女の身の安全のためだろうが、実際は国のためだ……。マリアンヌは馬鹿女ではないため、そんなことはわかっている。
そんな中でも彼女は、この戦争が早く終わるよう、毎日祈っていた。ときどき部屋を訪れる専属のメイドに、いつ戦争が終わるのかを何度も尋ねている。しかし、メイドは、もうすぐ終わりますといった曖昧な言葉を繰り返すだけだ……。決まりきった返答を聞くことに虚しさを感じるため、最近はあまり尋ねていない。
それでも彼女は、早く戦争が終わって自由の身になれるよう、毎日ただ祈っている……。