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愛憎渦巻く世界にて

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「金は大丈夫なんだろうな?」
ドレスデンの問いかけに、
「もちろん」
ウィリアムがそう答えると、メアリーが、金が入った布袋をドレスデンの目の前で、ジャラジャラと鳴らした。バーテンダーは「おお!」と驚く。
「値段はいくらですか?」
ウィリアムが値段交渉に入る。
「まあ、これぐらいだな」
ドレスデンは、指を使って、相場よりも高い値段を示した。ウィリアムが世間知らずのガキだと思ったからだ。だが、
「もっと安いはずですよね?」
すぐにウィリアムがそう返事した。ウィリアムの落ち着いた口調からドレスデンは、高い値段をふっかけるのは無理だと直感し、
「わかったよ。じゃあこれぐらいだ」
指を使って、相場よりも少しだけ高い値段を示した。
「それぐらいならいいでしょう」
ウィリアムは、いかにも渋々だという口調で言う。ドレスデンは心の中で喜び、ツケを払ってもらえるとバーテンダーも喜んでいた……。
「交渉成立だな。えーと、紙は」
「どうぞ」
ウィリアムが紙をテーブルに置く。
「用意がいいな。それで、何のために船を買うんだ?」
服の中から羽ペンとインク瓶を取り出しながら、ドレスデンが尋ねる。
「ゴーリ王国製のガレー船が欲しくてね。いろいろな船を集めることが私の趣味なんですよ」
用意していた理由を、ウィリアムが淡々と言う。それを聞いたドレスデンは、
{金持ち道楽か}
と、心の中でウィリアムを軽蔑した……。
 そして、ドレスデンは、あの船の売買契約書を書き始めた。ウィリアムとメアリーは心の中で喜びながら、ドレスデンの羽ペンを静かに見ていた。



「うまくいったか!?」
あの船の売買契約を終えたウィリアムとメアリーに、シャルルが開口一番に言った。シャルルとマリアンヌとゲルマニアは、さっきの路地裏で静かに待機していたのだ。
「当然だ」
ウィリアムは、朝飯前のことだという口調で言った。
「じゃあ、早く出航しよう!」
シャルルは、いてもたってもいられない様子だ。
「アンタ、馬鹿? 私たち5人だけで船を動かせると思っているの? フィクションの世界じゃないのよ?」
メアリーがシャルルに、馬鹿にした冷たい口調で言う……。
「人手だけじゃなく、水や食糧などもいるしな。これから忙しくなるぞ」
これはウィリアムだ。
「じゃあ、早く準備しよう!!!」
シャルルはそう叫ぶと、ウィリアムが買ったガレー船へ走っていった……。ウィリアムたちは、やれやれとシャルルを追いかける……。

 綺麗な夕日が、西の海の向こうへと沈もうとしていた。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん