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愛憎渦巻く世界にて

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 死刑式が始まると、最初にゴーリ国王の演説が始まった。長くて、それほどためになる話ではないし、文章にするのもめんどくさいので、割愛する。
「……では、マリアンヌ姫の死刑を執行する!」
国王の最後のこの言葉に、観衆は大きな歓声を上げた……。マリアンヌは、死を確信し、涙も出なかった……。

 マリアンヌの前に、死刑執行人に変装したシャルルがゆっくりと歩み出る。彼が彼女のすぐ近くまで来ると、死刑執行人の助手である男が、マリアンヌをシャルルに対して垂直の向きにひざまづかせ、彼女の頭を仰向けに倒した。首を切り落とすためだ……。
 シャルルは、マリアンヌをじっと見た後、ゲルマニアをそっと見た。ゲルマニアからの合図はまだ無く、シャルルは焦った。自分で判断しようかと考えたが、ゲルマニアのことを信用することにした。

「早く殺せ−!!!」
「なにノロノロやっているんだ!!!」

観衆からヤジが飛んでくる……。観衆は、ビールを飲んだりしながら、マリアンヌの死を待っていた……。
 シャルルは、ゆっくりと斧を振り上げた。斧が落ちる先には、マリアンヌの細い首があった……。
 そのとき、シャルルは、ゲルマニアのほうを見た……。

 ゲルマニアは、胸で十字を切っていた……。そして、もう片方の手で剣を抜こうとしていた……。
 シャルルは、勢いよく斧を振り下ろした……。

   グシャ!!!

 斧の刃が落ちた先は、マリアンヌの首ではなく、助手の背中だった……。助手はそのまま仰向けに倒れて死んだ……。助手の背中から噴き出す血が、死刑台を汚した。
 観衆は事故だと思い、キャーキャー騒ぎ出した。しかし、シャルルが、手錠や鎖を斧で破壊して、マリアンヌを自由にしてやると、ギャーギャー騒ぎ出した……。

 来賓席では、ウィリアムがニヤリとしていた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん