愛憎渦巻く世界にて
第9章 キュウシュツ
翌朝、ウィリアムは、ふかふかの豪華なベッドから勢いよく起き上がった。起きた彼は、周囲を素早く見回した。いつのまにか、彼は寝間着姿になっていた。
「おはようございます」
すぐ横にいたメアリーが、恭しく朝の挨拶をした。彼女の口調は、彼に睡眠薬を飲ませたことなど忘れたかのような、平然としたものだった……。
「睡眠薬を飲ませたな!?」
ウィリアムが彼女を責めた。しかし、彼女は平然とした口調のまま、
「ご自分の立場がおわかりですか?」
と返事した。
「……それはもう十分承知だよ!!! 私は助けに行くからな!!!」
彼はそう言い放つと、近くにあった自分の服に着替えようとした。
「ダメです!!!」
彼女は叫ぶと、彼の服を取り上げた。彼はうんざりとした表情をし、寝間着姿のまま、弓矢を持って、部屋から出ようとした……。
「ダメですよ!!!」
彼女は服を持ったまま、ドアの前に立ち塞がった……。
「そこをどけ!!! これは命令だぞ!!!」
彼は強気の口調で彼女に怒鳴った。
「ウィリアム殿下!!!」
そのとき、メアリーが前に立ち塞がっているドアが開き、イーデン大使が部屋に入ってきた。イーデン大使は手紙を持っていた。
「ゴーリ王室からの緊急の手紙で、今日の死刑式に、ウィリアム殿下にも出席してほしいとのことです!」
手紙の内容に、ウィリアムはニヤリとし、メアリーはうんざりとしていた……。
そのころ、死刑が行なわれる死刑式の式場となったゴーリ王城の広場は、どんどん準備が進められていた。
ゴーリ王国の死刑執行方法は斧による首切りで、訪れる観衆のために、高めの断頭台が設置されつつあった。また、抜け目のない商人たちは、『死刑ビール』や『死刑ソーセージ』や『死刑まんじゅう』といった商品を売る屋台の準備をしていた……。
一方のムチュー王国は、この戦争に負けたという確信で、ひどく沈んだ空気に満ちていた……。
王城内では、今後のことに悲観し、自殺する大臣も出た……。毒味役が毒に当たって死に、ムチュー王室内は疑心暗鬼の状態に陥った。
そして、国内では、ムチュー王国民の怒りの矛先がムチュー王室に向き、今にも暴動が起きそうな事態に陥っている……。
ムチュー王国の王女であるマリアンヌがこのことを知れば、彼女はひどく悲しむことだろう……。