愛憎渦巻く世界にて
ゲルマニアは、王城の地下牢へ向かった。そこに、マリアンヌが捕らわれているのだ。
「ぐーぐー」
「すーすー」
地下牢の前にいた2人の兵士は寝ていた……。彼女は、このままマリアンヌを逃してやろうかと考えたが、いくらなんでも居眠りしていたぐらいで、この2人の兵士が死刑になるのも酷だと思ったのでやめた。
「オイ!」
ゲルマニアがそう言った瞬間、2人の兵士は同時に目を覚まし、ゲルマニアを見た途端、直立不動の姿勢をとった。
「マリアンヌ姫と面会させてもらうぞ」
ゲルマニアの突然の要求に、2人の兵士は、
「いけません!」
と、即答した。
「……『誰も来ていない』ということにしておけ」
「しかし!」
「まさか、『居眠りしていたので、おそらく誰も来ていない』と報告するつもりか?」
ゲルマニアはそう言って、2人の兵士を遠回しに脅した……。脅された2人は、顔を見合わせて震えていた……。死刑になっても仕方がないので、当たり前の反応だった。
「『誰も来ていない』ということで、いいな?」
「……はい」
2人は仕方なく、面会を承諾した……。
その地下牢にはマリアンヌがおり、地面に座りこんでいた。
また閉じ込められた彼女は、近づく死の恐怖により、一睡もできなかった。さらに、「最後の晩餐」も口に入らなかった。
眠れない彼女は、死の世界とはどのような世界なのかを考えていた……。
彼女は幼いころ、王室付き聖職者にそのことを質問していた。そして、彼いはく、死の世界は、天国という楽園だという。しかし、当時、今よりも子供だった彼女は、「なぜわかるのですか?」とさらに質問し、その聖職者を困らせていた……。
そんな彼女の耳に、地下牢の外から、ゲルマニアと哀れな2人の兵士のやり取りが聞こえてきた。
すると、彼女は身震いする……。彼女は、ゲルマニアが自分を殺しに来たと思っていた。ゲルマニアを怒りっぽくて乱暴な女だと思っているからだ。
{嫌!!! 来ないで!!! 神様、助けて!!!}
彼女は心の中で強く思い、ひたすら願った……。