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愛憎渦巻く世界にて

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第6章 ツイセキ



「あれ? マリアンヌ様は?」

 翌朝、宿屋の部屋の床でシャルルが目を覚まし、部屋を見回した後、そう呟いた。その部屋にいるのは、彼とウィリアムとメアリーだけだった。ウィリアムは彼のすぐ横で、メアリーはベッドで寝ていた。
 トイレかと思い、シャルルは部屋を出て、宿屋のトイレへ向かう。


 宿屋に1つだけあるトイレは使用中になっていた。シャルルは、トイレに入っているのはマリアンヌだと思い、一安心した。
 しかし、少ししてトイレから出てきたのは、宿屋の主人だった……。
「あの、ぼくたちといっしょにいた茶髪の女の子は知りませんか?」
シャルルは主人に尋ねた。
「……あの子なら、どこかに出かけたよ」
主人はそう言うと、逃げるようにその場から去っていった……。主人の立ち去り方と表情から、シャルルは不審に感じた。だが、念のため、マリアンヌが帰ってくるのを待つことにして、部屋に戻った。


「やられたな」

 シャルルが部屋に入ると、ウィリアムがそう言った。ウィリアムやメアリーも起きており、彼らは荷物をまとめていた。
「やられた?」
「……君は馬鹿か? 昨日の夜、急に眠たくなっただろう? 姫が寝ている隙にさらわれたのだよ」
「!?」
「あれは睡眠薬の効果だったわ。お酒といっしょに飲んだから、下手すればそのまま死んでいたわよ。ウィリアム様、大丈夫ですか?」
メアリーが不安そうにウィリアムに尋ねた。
「私は大丈夫だが、マリアンヌ姫がヤバイだろ?」
ウィリアムはそう言うと、部屋を出ていった。メアリーがその後に続いたが、シャルルは部屋の真ん中で突っ立ったままだった……。

「……ぼくのせいだ。ぼくのせいで、マリアンヌ様は……」

 シャルルは、マリアンヌがさらわれたことで、自分を責めていた。もう殺されているだろうと考えると、シャルルは死にたい気分になった……。
「おい、アホみたいなシーンをやっている暇は無いぞ?」
部屋に戻ってきたウィリアムが言った……。シャルルは、平然としている彼を睨んだ。
「どうせ、おまえらタカミ帝国の人間には、マリアンヌ様が死んでいようが関係ないんだろ?」
シャルルはそう問いただした。
「……マリアンヌさんはまだ死んでいない! もし彼女が殺されているなら、いっしょにいた私たちも殺されている!」
ウィリアムは、ハッキリとした口調でそう言った。シャルルは、ハッとした。
「……そうだ。まだ間に合うんだ」
「そういうことだ。さあ、マリアンヌさんを取り戻しに行くぞ」
3人は部屋を出た。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん