愛憎渦巻く世界にて
夕方になり、4人は次々に起き上がる。しっかりと休めたようだが、お腹が減っていた。そのため、宿屋の食堂に夕食を食べに向かう。
宿屋の食堂には、大勢の人がいた。どうやら、この食堂は、村で唯一の酒場でもあるようだ。あちこちで、乾杯の大声がしたり、馬鹿笑いがあがっていた。
4人は席を探した。大学のぼっちのように、便所やゴミ箱の上で、夕食を食べるわけにはいかない……。(もちろん、便所飯など論外だ!)
「そこの少年たち!!! こっちが空いてるぞ!!!」
そのとき、元気そうな老人(先ほどの年寄りたちではない)が、立ち上がって、手招きしていた。行ってみると、4人分の席が空いていた。どうやら、老人は、このチェンバレン村の村長のようだ。村長の威厳か何かを使い、他の者に席を空けさせたのだろうか。
「ありがとうございます」
マリアンヌがお礼を言う。
「い…いえいえ」
村長は、どこかぎこちなかったが、シャルルたちは、年寄り特有のアレだろうと気にしていなかった……。
「酒はどうだ? おごるよ?」
村長は、4人にワインをすすめた。大きなビンの中で、赤いワインがゆらゆらと揺れている。
「スコッチはありますか?」
ウィリアムが、空気を読まない注文をした……。
「そういう名前の酒は無いねえ」
村長がそう言うと、ウィリアムはあきらめ、4人はワインをいただくことにした。マリアンヌも断りきれずに飲んだ。ウィリアムは、なんと一気飲みだ。まるで大学生のような、無茶で下品な飲みかたであり、マリアンヌは少し引いた……。
「この赤ワインは最高だ!!! よほどいいブドウを」
ウィリアムは喋り終える前に、突然、テーブルに突っ伏した……。他の3人はそれを、ぼんやりとした表情で見ているだけだ。